社会医療法人債発行法人
社会医療法人債を発行する場合の監査の適用関係
地域医療を担う社会医療法人は、自ら社債を発行することが許されており、この社会医療法人債を発行する場合には、医療法に基づく監査を受けるとともに、一定の場合には金融商品取引法上の監査も受けることになります。
根拠法令
医療法第51条3項において、「社会医療法人(厚生労働省令で定めるものに限る。)の理事長は、財産目録、貸借対照表及び損益計算書を公認会計士又は監査法人に提出しなければならない。」とし、これを受けて、医療法施行規則第33条第3項において、「法第51条第3項に規定する社会医療法人は、社会医療法人債発行法人である社会医療法人とする。」とされています。
監査上の取り扱い
日本公認会計士協会より、平成21年4月14日に、非営利法人委員会報告第33号『社会医療法人債を発行した社会医療法人に対する監査上の取り扱い』、平成24年4月10日に、同『社会医療法人債を発行した社会医療法人に対する監査上の取り扱いの改正について』が公表されています。
監査が適用されるのは以下の2つのケースです。
① 社会医療法人が一定の要件を満たす社会医療法人債を発行することにより、医療法に基づく監査の適用対象となると同時に金融商品取引法に基づく監査の適用対象となる場合
② 社会医療法人債を発行したことにより医療法に基づく監査の適用対象となるが、社会医療法人債の発行が一定の要件を満たさないため金融商品取引法に基づく監査の適用対象とはならない場合
| 医療法に基づく監査 | 金融商品取引法に基づく監査 | |
|---|---|---|
| ①の会社 | 社債を発行するため適用対象 | 一定の要件(公募等)を満たす場合に適用対象 |
| ②の会社 | 社債を発行するため適用対象 | ― |
つまり、公募等により金融商品取引法の適用対象となる場合には、医療法に基づく監査を行うほか、上場企業等と同様に金融商品取引法に基づく監査を行う必要があります。
適用される会計基準
上記①の医療法人(医療法と金融商品取引法に基づく監査を受ける医療法人)金融商品取引法の適用を受けますので、企業会計原則を始め、連結財務諸表原則、金融商品に関する会計基準、退職給付に係る会計基準など、上場企業等と同一の会計基準が適用されます。そして、医療法に基づく監査についても、同一の医療法人が作成する財務諸表が、金融商品取引法に基づく財務諸表と医療法に基づく財務諸表で内容が異なることは望ましくなく、そのため、医療法に基づく監査についても、金融商品取引法の適用を受ける場合と同一の会計基準が適用されることになります。
上記②の医療法人(医療法に基づく監査を受けるが、金融商品取引法に基づく監査は受けない医療法人)
『医療法上のみの監査対象となった社会医療法人と金融商品取引法上の監査対象となった社会医療法人において、それぞれ社会医療法人債を取得した債権者及びその他の利害関係者が受け取る会計情報によってもたらされる保護の程度に差異を設ける理由はなく、提供される会計情報はいずれの場合も同一レベルの会計基準によって作成されていることが必要となる。従って、(中略)金融商品取引法の適用を受ける社会医療法人に適用される会計基準と同一の会計基準を適用するものとする。』とされています。
| 金融商品取引法に基づく 監査を行う場合 |
医療法に基づく監査を行う場合 | |
|---|---|---|
| ①の会社 | 当然に金融商品取引法に基づく会計基準の適用 | 金融商品取引法と差異を設けるのは望ましくなく、金融商品取引法に基づく会計基準の適用 |
| ②の会社 | ― | 投資家保護の観点から①の会社と差異を設ける理由は無く、金融商品取引法に基づく会計基準の適用 |
つまり、社会医療法人債を発行した場合は、全ての場合において、上場企業等と同様に、金融商品取引法に基づく会計基準の適用が求められることになります。
監査対象
また、社会医療法人債を発行する医療法人が作成する財務諸表及び監査対象となる財務諸表は以下の通りです。
| 作成する財務諸表 | うち、監査対象 | |
|---|---|---|
| 金融商品 取引法 |
連結貸借対照表、連結損益計算書、連結包括利益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、連結注記表、連結附属明細表(連結を作成する場合) | 同左 |
| 医療法 | 財産目録、貸借対照表、損益計算書、純資産変動計算書、キャッシュ・フロー計算書、注記表、附属明細表 | 財産目録、貸借対照表、損益計算書、注記表 |
医療法に基づく監査では、医療法人が作成した財務諸表の全てが監査対象になるわけではなく、財産目録、B/S、P/L、注記表の4点に限られます。
発行直前期の適用関係
IPOでは、IPOを行う直前期に、過去に遡って2期分の法定監査に基づく監査報告書を受領しますが、社会医療法人債を発行する場合には、直前期の監査は法定監査の適用対象外であり、監査は求められません。仮に監査を行う場合には、あくまで任意監査の範疇での対応となります。
これは、根拠法令である医療法施行規則第33条第3項に規定する「社会医療法人債発行法人である社会医療法人」が、現に社債を発行している社会医療法人を意味するためです(日本公認会計士協会の見解でもあります)。
従って、発行直前期の監査報告書は、『医療法に準じた監査』となり、発行期より『医療法に基づく監査』となります。