8.買換特例
個人が事業用資産を買い換えた場合の特例について
個人事業者が居住用や事業用の資産を買い換えた場合、課税の繰り延べ措置や課税の特例が設けられています。今回は、事業用資産を買い換えた場合の特例についてまとめたいと思います。
【1】 特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例(措法第37条)
(1)内容
個人が事業の用に供している一定の土地建物等を譲渡して、一定の期間内に特定の地域内にある土地建物等の特定の資産を取得し、その取得日から1年以内にその買換資産を事業の用に供した場合において、一定の要件を満たした場合には、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができます。
(2)譲渡所得の計算
①譲渡資産の譲渡価額≦買換資産の取得価額の場合
(イ)収入金額 譲渡資産の譲渡価額×20%
(ロ)必要経費 (譲渡資産の取得費+譲渡費用)×20%
(ハ)課税される譲渡所得金額 (イ)-(ロ)
②譲渡資産の譲渡価額>買換資産の取得価額の場合
(イ)収入金額 譲渡資産の譲渡価額-買換資産の取得価額×80%
(ロ)必要経費
(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×収入金額/譲渡資産の譲渡価額
(ハ)課税される譲渡所得金額 (イ)-(ロ)
(3)適用要件
次のすべての要件を満たした場合、(1)の適用を受けることができます。
①譲渡資産及び買換資産がいずれも事業用のものであること。
②譲渡資産と買換資産が一定の条件に該当すること。

③買換資産が土地等である場合には、譲渡した土地等の面積の5倍(一定の場合には10倍、以下同じ。)以内であること。5倍を超える部分については、適用はありません。
④資産を譲渡した年又はその年の前後1年中に買換資産を取得すること。
(譲渡した年の前年中に取得した資産を買換資産とするためには、税務署長に一定の届出書を提出する必要があります。)
⑤買換資産の取得日から1年以内に事業の用に供すること
⑥譲渡資産の譲渡が、収用等、贈与、交換、出資によるもの、及び代物弁済としての譲渡ではないこと
⑦買換資産の取得が、贈与又は交換によるもの、所有権移転外リース取引によるもの及び代物弁済によるものではないこと
(4)申告手続き
特定の事業用資産の買換えの特例の適用を受けようとする場合には、以下の申告手続きをする必要があります。
①確定申告書の「特例適用条文」欄に「措法37条」と記載
②確定申告書に以下の書類を添付すること
(イ)譲渡所得計算明細書
(ロ)買換資産の登記事項証明書、その他買換資産の取得を証する書類
※買換資産を取得する見込みでこの特例の適用を受けた場合には、買換え資産を取得した日から4ヶ月以内に提出することになります。
(ハ)譲渡資産及び買換資産が適用要件とされている特定の地域内にあることを証する市区町村長等の証明書
(5)更正の請求、修正申告
①更正の請求
買換資産を取得する見込みでこの特例の適用を受けた場合に、買換資産の取得価額の見積額よりも、実際の取得価額の方が多い場合には、当初申告した所得税額が、納付すべき所得税に比して過大となることがあります。
この場合には、買換資産の取得日から4ヶ月以内に更正の請求書を提出し、所得税の還付を受けることができます。
②修正申告
買換資産を取得する見込みでこの特例の適用を受けた場合に、買換資産の取得価額の見積額よりも、実際の取得価額の方が少なかった場合には、当初申告した所得税額が、納付すべき所得税に比して過少となることがあります。
この場合には、買換資産の取得期間を経過する日から4ヶ月以内に修正申告書を提出して、不足している所得税を納付する必要があります。
また、買換資産を取得見込であったにもかかわらず取得しなかった場合や、買換資産の取得日から1年以内に事業の用に供さなかった、又は供しなくなった場合についても、その事情に該当することとなった日から4ヶ月以内に修正申告書を提出し、不足している所得税を納付する必要があります。
【2】店舗併用住宅を買い換えた場合
個人事業者が居住用と店舗用が一緒になっている家屋を売却し、同じ種類の店舗併用住宅に買い換えた場合には、その店舗用に使っていた部分について、【1】の特例の適用を受けることができます。
なお、居住用としての使用割合が建物全体の90%以上である場合には、そのすべてが居住用に該当するものとして、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」や、「居住用財産を買い換えた場合の特例」を受けることができます。
また、店舗用としての使用割合が建物全体の90%以上である場合についても、そのすべてが店舗用に該当するものとして、【1】の特例の適用を受けることができます。