1.導入の検討
連結納税制度の導入の検討
平成22年度の税制改正により、連結納税制度を導入するグループ法人が増加しています。
理由として、連結納税制度の導入促進を意図した制度改正が行われたこと、グループ法人に対して連結納税を選択しない場合でも従来の連結納税制度の取扱いの一部が適用される改正が行われたこと、の2つが挙げられます。
1. 連結納税制度の改正内容
平成22年度税制改正において、①連結子法人の連結開始前欠損金の持込制限の緩和、②連結納税の承認申請書の提出期限繰り下げ、③連結納税加入の場合のみなし事業年度の特例の創設、④連結納税開始又は加入時に一時的に連結グループ内に属している法人が所有する資産について時価評価の対象から除外、などが講じられました。
最も影響が大きい改正は①になります。
①連結子法人の連結開始前欠損金の持込み制限緩和
単体納税制度から連結納税制度へ変更する際には課税関係を清算する仕組みとなっており、連結納税の開始又は加入前に生じた欠損金の繰越控除には制限が加えられています。
改正前は連結子法人の連結納税開始又は加入前の欠損金を持込むことはできませんでしたが、22年度税制改正において、親法人による完全支配関係が長期間継続している子法人等については、グループ内で生じた欠損金と同等とみることができるため、例外的に連結納税の開始又は加入前の欠損金を持込むことできるようになりました。
この連結グループに持込んだ欠損金は、個別所得金額を損金算入の限度として、連結グループ内で繰越控除することができます。
②連結納税の承認申請書の提出期限繰り下げ
改正前は、「連結納税を開始しようとする期間の開始の日の6月前の日まで」に、承認申請書を提出しなければなりませんでしたが、「連結納税を開始しようとする期間の開始の日の3月前の日まで」に提出期限が繰り下げになりました。
③連結納税加入の場合のみなし事業年度の特例の創設
連結グループに加入した際、加入した連結子法人は「加入日の前日」がみなし事業年度終了の日となりますが、平成22年度税制改正において、「加入日の前日の属する月次決算期間の末日」をみなし事業年度終了の日とすることができる特例が設けられました。
特例を受けるためには、納税地の所轄税務署長に届出書を提出する必要があります。
なお、加入日の前日の属する月次決算期間の末日まで完全支配関係が継続しない場合には、加入日で事業年度を区切らず、連結納税の承認も受けられないこととなります。
④連結納税開始又は加入時に一時的に連結グループ内に属している法人が所有する資産について時価評価の対象から除外
連結納税開始又は加入時には、子法人が保有する資産の時価評価をする必要がありますが、支配日以後2月以内に連結グループから離脱する子法人の保有する資産等については時価評価の対象から除外されました。
2. 単体納税制度との比較
平成22年度税制改正によりグループ法人税制が導入され、従来、連結納税を選択している場合のみ適用されていた取扱いの一部が連結納税を選択していない100%支配関係にあるグループ法人に対しても適用されることになりました。
連結子法人が中小企業優遇税制の適用の制限規定などの連結納税制度のデメリットとされていた規定が、グループ法人税制により単体納税制度下でも適用されることになり、法人間の損益通算が可能である連結納税制度への注目が高まっています。
以下、連結納税制度とグループ法人税制下の単体納税制度を主な相違点・共通点をまとめました。
| 連結納税 | 単体納税 (グループ法人税制適用) |
|
| グループ法人間の 損益通算 |
可 連結親法人の連結納税開始前の欠損金についても、法人間で繰越控除できる。 |
不可 |
| 子法人の繰越欠損金 | 一定の要件(完全支配関係が5年以上継続している場合など)を満たす場合には、個別所得額を損金算入限度として繰越控除できる。 要件を満たさない場合には消滅する。 |
消滅しない。 |
| 中小企業優遇税制 (資本金の額等が1億円以下の法人に対して適用される優遇制度…法人税の軽減税率、特定同族会社の特別税率の不適用、貸倒引当金の法定繰入率、交際費の定額控除制度、欠損金の繰戻し還付の停止措置の不適用) |
連結親法人の資本金が1億円以下の場合、連結納税グループ内の全ての法人において、適用可。 ただし、資本金5億円以上の大会社の100%子会社である法人は適用不可。 |
資本金5億円以上の大会社の100%子会社である法人は、適用不可。 |
| グループ法人間の 資産の譲渡取引等 |
一定の資産を譲渡した場合、譲渡時においては譲渡利益額又は譲渡損失額を繰り延べる。当該資産をグループ外へ譲渡、貸倒、除却等した場合、繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額を計上する。 (子法人の連結納税開始又は加入時に、すでに繰延べられている譲渡利益額又は譲渡損失額がある場合において、完全支配関係が5年以上継続しているなどの一定の要件を満たすときは、繰り延べられた譲渡利益額又は譲渡損失額は、連結開始又は加入直前の事業年度の益金又は損金に算入する。) | 同左。 ただし、カッコ書き部分は除く。 |
| グループ法人間の 受取配当の益金不算入 |
全額益金不算入 (負債利子を控除する必要なし) |
同左 |
| グループ法人間の 寄付金の損金不算入 |
全額損金不算入 寄付を受けた法人の受贈益は全額益金不算入 (損金算入額の計算は、連結親法人の連結個別資本金等の額と連結所得の金額を基礎として、連結グループを一体として行う。) 子法人がグループ法人間で寄付金を支出した場合、又は寄付を受けた場合、株主側において子会社株式の簿価を調整する。(連結法人間の寄付金については、投資簿価修正の規定があるため、調整不要。) |
同左。 ただし、カッコ書き部分は除く。 |
| 適用関係 | 申請・承認 | 強制 |
| 子法人の連結納税開始 又は加入時の 資産の時価評価 |
必要 ただし、一定の要件(完全支配関係が5年以上継続している場合など)を満たす場合には不要。 |
不要 |
| みなし事業年度 | あり | なし |
100%支配関係のある法人グループについては、もう一度、連結納税制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、連結納税制度は一度適用すると、基本的には適用を取り止めることはできませんので、今後の法人グループの展望を踏まえて慎重に対応する必要があります。