5.資産の時価評価
連結納税の導入を検討する際に、最初に論点となるのが、連結納税開始に伴う「子法人の資産の時価評価」と「繰越欠損金の引継ぎ」の取扱いです。連結納税を導入する場合には、これらの取扱いが連結納税グループ全体に与える影響を事前に検討する必要があります。
今回は、連結納税開始に伴う「子法人の資産の時価評価」について、まとめてみたいと思います。
(1) 概要
連結納税を適用する場合には、その開始時に、一定の子法人が有する一定の資産(時価評価資産)については、時価評価を行う必要があります。時価評価により生じた評価益又は評価損は、子法人の連結納税開始直前事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入されることになります(法法61条の11)。
これは、連結納税を適用することで、単体納税から連結納税へと納税単位が変更されるため、単体納税時に生じた資産に係る含み損益については、単体納税時に清算し、異なる納税単位である連結納税には引き継ぐべきではないと考えられていることによるものです。
なお、連結納税開始に伴う資産の時価評価は、子法人のみに適用される規定であり、連結親法人が保有する資産については、時価評価をする必要はありません。
(2) 時価評価対象子法人
連結納税開始に伴い、原則的には、全ての子法人は、その保有する時価評価資産を時価評価する必要があります。
ただし、子法人の事務負担等を考慮して、一定の子法人については、時価評価の対象外とする例外が設けられております。
一定の子法人とは、次の子法人をいいます(法法61条の11①一~六)。
①開始日の5年前の日以降に、株式移転により設立された子法人で、株式移転の日から開始日まで連結親法人による完全支配関係が継続している子法人
②開始日の5年前の日から開始日まで、連結親法人による完全支配関係がある子法人
③開始日の5年前の日以降に、連結親法人又は連結親法人の完全子法人により設立され、設立日から開始日まで連結親法人による完全支配関係が継続している子法人
④開始の日の5年前の日以降に、連結親法人又は連結親法人の完全子法人により行われた適格株式交換に係る完全子法人で、株式交換の日から開始日まで連結親法人による完全支配関係が継続している子法人
⑤開始の日の5年前の日以降に、連結親法人又は連結親法人の完全子法人により行われた適格合併等に係る被合併法人等の完全子法人で、適格合併等の日から開始日まで連結親法人による完全支配関係が継続している子法人
⑥開始の日の5年前の日以降に単元未満株式の買取等により完全子法人となった法人で、買取等の日から開始の日まで連結親法人による完全支配関係が継続している子法人
(3) 時価評価資産
時価評価の対象となる資産(時価評価資産)とは、子法人が、連結納税開始直前事業年度末に保有する次の資産をいいます。
ただし、次の資産に該当する場合でも、その時価と帳簿価額との差額が、連結納税を適用しようとする子法人の資本金等の金額の2分の1に相当する金額、又は、1,000万円のいずれか少ない金額に満たないものは、時価評価資産に含まれません(法令122の12①四)。
①固定資産(圧縮記帳等の規定の適用を受けた減価償却資産を除く)
②棚卸資産である土地(土地の上に存する権利を含む)
③有価証券(売買目的有価証券及び償還有価証券を除く)
④金銭債権
⑤繰延資産
(4) まとめ
連結納税を導入する場合において、上記の対象外の規定に該当しないときは、連結納税開始直前事業年度に、含み損益を実現させる必要があります。
そのため、含み益が生じている資産を保有している場合には、子法人の連結納税開始直前事業年度において、課税が生じる可能性があり、多額の含み益が生じている場合には、その影響も大きくなります。
また、含み損が生じている資産についても、連結納税開始直前事業年度において、含み損を吸収できるほどの所得が生じていない場合には、繰越欠損金を構成することになりますが、時価評価対象子法人は、連結納税開始時において、単体納税時の繰越欠損金が切り捨てられることになりますので、その繰越欠損金を利用することができなくなります。
冒頭でも記載したとおり、連結納税を導入するにあたっては、開始に伴う資産の時価評価損益が連結納税グループ全体に与える影響を考慮したうえで、導入の可否を判断する必要があります。