18.相続財産の把握
相続財産の把握
相続税対策を行うにあたって、まず相続財産が全体でどれぐらいあるのか、概算で評価してみる必要があります。
相続税申告にあたっての財産評価は、国税庁が出している「財産評価基本通達」に従って行いますが、高度な専門知識を要するため、税理士等の専門家に依頼して行うのが一般的で、時間も費用もかかります。
しかし、相続財産から債務を控除した価額が相続税の基礎控除額(5,000万円+1,000万円×法定相続人の数)よりも少なければ相続税の申告は不要であり、財産の価額を厳密に評価する必要もありません。
相続税の申告が必要かどうかを見極める意味も含めて、自分の財産債務がどれぐらいあるのか概算で把握しておくことは、非常に有効といえます。
また、相続税申告が必要かどうかにかかわらず、相続があった場合には相続財産を分割する必要があり、資産の内容や家族構成によってはトラブルが生じる可能性があります。生前に財産を把握することで、その後対策を立てることも可能になってきます。
以下に、主な財産と評価の方法を簡単にまとめました。
| 財産の種類 | 評価方法 | 評価の目安 |
|---|---|---|
| 宅地 (評基通11) |
(1)市街地的形態を形成する地域にある宅地…路線価方式 (2)(1)以外で、路線価が定められていない地域にある宅地…倍率方式 |
取引価額の80%程度 |
| 借地権 (評基通27) |
宅地の価額 × 借地権割合 | 宅地価額の60~70%程度 |
| 貸宅地 (評基通25) |
宅地の価額 × (1-借地権割合) | 宅地価額の30~40%程度 |
| 貸家建付地 (評基通26) |
宅地の価額 × (1-借地権割合×借家権割合) | 宅地価額の70~80%程度 |
| 家屋 (評基通89) |
(1)自用家屋…固定資産税評価額 (2)貸家…自用家屋 × (1-借家権割合) |
貸家の場合は、自用家屋の60~70%程度 |
| 預貯金 (評基通203) |
預入残高 + 既経過利子(源泉所得税等20%控除後の金額) 名義預金も含みます。 |
預入額 |
| 貸付金債権 (評基通204) |
返済を受けるべき金額 + 既経過利息 | 貸付残高 |
| 一般動産 (評基通129) |
売買実例価額、精通者意見価格等 又は新品の価額から経過期間の償却額を控除した金額 |
中古市場取引価格など |
| 書画骨董品 (評基通135) |
売買実例価額、精通者意見価格等 | 推定売買価額 |
| 上場株式 気配相場等のある株式 (評基通169~177-2) |
課税時期の最終価格、課税時期の属する月以前3か月間の最終価格の各月平均額のうちの最も低い価格 | 取引相場 |
| 公社債 (評基通197) |
課税時期の最終価格等に、その公社債の種類に応じ、既経過利息を加算等して算定した価格 | 取引相場 |
| 取引相場のない株式 (一般的な株式の場合) |
(1)主要株主 (2)(1)以外の株主 |
業績や資産内容によって評価額が決まります。(※1) |
| 生命保険金 (相法3①一) |
受取金額 - 非課税額(500万円 × 法定相続人の数) | (※2) |
| 死亡退職金 (相法3①二) |
受取金額 - 非課税額(500万円 × 法定相続人の数) | (※2) |
| 生命保険契約に関する権利 (相法3①三) |
解約返戻金相当額 | (※2) |
財産評価は、原則として時価により行うものとされています。この場合の時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、「財産評価基本通達」の定めによって評価した価額によるとされています。
預貯金や貸付金など、そのものの金額で評価できる場合や、上場株式など市場で多く取引されていて個別の取引価格が客観的にわかり易いものについては、評価も比較的容易にできます。
土地はその利用の形態によって評価が異なってきますが、毎年国税庁から出される「路線価図、評価倍率表」や、市区町村から送付される固定資産税の課税通知書に記載されている「固定資産税評価額」から大体の目安をつけることは可能です。
(※1)取引相場のない株式について
取引相場のない株式とは、上場株式及び気配相場等のある株式以外の株式であり、大部分の株式がこれに該当します。
文字通り、取引価格(市場価格)が明らかとなっているものではなく、仮に取引事例がみられる場合でも、それは特定の当事者間で取引されるのが通常であり、その取引価格を客観的価値として評価に採用することは問題があります。
さらに、会社の規模や業種、業績、株主構成など種々多様であるため、これらを同一の評価方法で評価することは適当でないので、それぞれの会社規模等の実態に即した評価を行うことになっています。
他の財産のように、容易に評価額の目安を図ることはできませんが、「財産評価基本通達」に評価方法が詳細に定められているため、取引相場のない株式を所有している場合は、早い段階で試算してみる必要があるでしょう。
(※2)生命保険金、死亡退職手当金、生命保険契約に関する権利の評価
生命保険金、死亡退職手当金等は、本来の相続財産ではありませんが、被相続人の死亡に起因して取得するため相続財産に含めて相続税を計算します。
生命保険については、保険契約の内容によってかかってくる税金が異なり、契約者、被保険者共に本人である保険契約の保険金額が、相続財産に含まれます。
契約者が本人で、被保険者が本人以外の保険契約については、生命保険契約に関する権利として、相続開始時点の解約返戻金相当額が相続財産となります。
また、死亡退職金も相続財産に含まれ、多額になる場合もありますので、会社の規定等に基づいて概算で計算してみる必要があるでしょう。
(2012.8.01)