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青色申告
青色申告制度

 法人を設立した場合には、設立届けとともに、青色申告の届出書も提出するのが一般的です。
 これは、この届出の承認を受けると、会社にとって様々な特典があるためですが、今回は、そんな青色申告制度の概要について、まとめてみたいと思います。
  1. 青色申告書を提出することによる特典
    当期に発生した欠損金を翌期以後7年間繰り越して控除することができます。(法57)



    解散等を行った場合に、その事業年度において欠損が生じており、かつ、その前年において所得が出ていた場合には、一年間に限り、その欠損金を繰り戻して前年の所得に充当することにより、税金の還付を受けることができます。(法80)



    税務署長が、青色申告により申告した内容に関し更生処分を行う際には、あらかじめ備え付けてある帳簿書類等を調査したうえでないと行えず、税務署長の推計により行うことはできません。(法130、131)




    税務署長により行われた処分に対し不服がある場合には、通常、異議申し立てを行った上で国税不服審判所に対し審査請求を行うことができますが、青色申告により提出された申告書に係るものである場合には、異議申し立てを行わずに、直接審査請求を行うことができます。(通則法75④)
    試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の適用(措置法42の4)
    各種特別償却または特別控除の適用(措置法46の4、47の2〜52、60)
      例)



    エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却または法人税額の特別控除(措置法42の5)
     

    中小企業社等が機械等を取得した場合の特別償却または法人税額の特別控除(措置法42の6)
     

    事業基盤強化設備等を取得した場合の特別償却または法人税額の特別控除(措置法42の7)
      中小企業者等の教育訓練費の額の法人税額の特別控除(措置法42の7⑤)
    海外投資等損失準備金等、各種準備金の積み立て(措置法55〜58、61の2)
    対外船舶運航事業を営む法人の日本船舶による収入金額の課税の特例(措置法59の2)
    技術研究組合の所得計算の特例(措置法66の10)
    中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(措置法67の5)
    損害保険会社の受取配当等の益金不算入等の特例(措置法67の7)

  2. 承認の取り消し
     上記のように、様々な特典がある青色申告制度となりますが、一方で、下記のような事実が生じた場合には、その事実が生じた事業年度まで遡って青色申告の承認が取り消されることとなります。(法127、「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」)

     例えば、3年前の申告について承認が取り消された場合には、3年前から現在までの全ての申告について上記の特典が受けられないこととなりますので、承認の取り消しといった事態になった場合には、納税者に与えるインパクトは相当なものとなることが予想されます。

    帳簿書類の備付け、記録又は保存が適正に行われていない場合
     




    単純に帳簿書類を備え付けていることだけでなく、税務調査等があった場合に、税務職員に対し提示を行うことも条件となりますので、税務調査時に税務職員への提示を拒否し、再三提示を求められても一向に提示がなされない場合には、この規定により承認が取り消されることとなります。
    また、その後、不服申し立て等の段階にて提示を行ったとしても認められません。
    帳簿書類について、税務署長からの指示に従わなかった場合


    帳簿書類記載の取引の全部または一部について隠ぺい・仮装の記載等を行い、その他その記載等をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がある場合
     


    次のイ〜ハのいずれかに該当する場合には、この規定に該当することとされています。(イ、ロの規定については、調査があったことにより、その金額に修正等がなされることを予知して、期限後申告書、または修正申告書を提出した場合に準用されます。)
     




    無申告のために所得金額の決定又は更正がされた場合において、その事業年度の当該決定又は更正後の所得金額(以下「更正所得金額」という。)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額(以下「不正所得金額」という。)が、更正所得金額の50%に相当する金額を超えるとき。
    ただし、不正所得金額が500万円に満たないときを除く。
     






    欠損金額を減額する更正(所得金額があることとなる更正を含む。)がされた場合において、その事業年度の当該更正により減少した部分の欠損金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく金額(以下「不正欠損金額」という。)が、当初の申告に係る欠損金額(所得金額があることとなる更正の場合にあっては、当該所得金額を加算した金額。以下「申告欠損金額」という。)の50%に相当する金額を超えるとき。
    ただし、不正欠損金額が500万円に満たないときを除く。
     


    帳簿書類への記載等が不十分である等のため、推計によらなければ適正な所得金額の計算ができないと認められる状況にある場合

       ただし、上記イ又はロに該当することとなった場合でも、その事業年度前7年以内の各事業年度につき次のいずれの要件も満たし、かつ、今後適正な申告をする旨の申出等があるときは、青色申告の承認の取消しを見合わせることとされています。
      青色申告承認取消処分を受けていないこと。
      既往の調査に係る不正所得金額又は不正欠損金額が500万円に満たないこと。
    確定申告書をその提出期限までに提出しなかった場合
     

    事務運営指針では、2事業年度連続して無申告であった場合にこの規定に該当するとされています。
    その他一定の事実

  3. 再申請
     青色申告の承認の取り消し等により承認が取り消された後、再度、この制度の適用を受けるため、青色申告の承認の申請を行うには、その通知等を受けた日以後一年を超えてからでないと、再申請を行うことはできませんので注意してください。(法123③)

 青色申告制度は、複式簿記の原則に従いすべての取引を帳簿書類に記載・記録し、その記録に基づき決算を行うことを前提として各種特典を設けているため、当然に、帳簿書類等を備え付け、これを7年間保存することを要請しています。(法規則53〜59)

 過去の裁決事例等でも、税務調査時に帳簿書類の提示を拒否し、承認を取り消された例はいくつかあります。
 もちろん、すぐに提示できなかったからといって、即承認が取り消されるわけではないですが、速やかに提示することにより良い印象を与え、ストレスなく作業を進めることができると考えます。

 従って、適正な申告を行うためにも、毎日の取引における請求書・領収書等の整理、元帳・仕訳帳等の帳簿書類の備付け等を毎期きちんと行い、税務調査等があった時には速やかに提示することができるよう、普段から心がけておくことが大切です。

(2011.3.16)

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