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ジェトロ『中国GDP世界第2位時代の日本企業の対中ビジネス戦略』報告書について〜その1〜
2011年3月にジェトロから出された『中国GDP世界第2位時代の日本企業の対中ビジネス戦略』報告書は、大手企業を中心とした中国進出日系企業に対するヒアリング等を通じて、中国における日系企業の現状、将来展望、今後の戦略等についてまとめています。 このレポートは主として大手企業を対象としたものですが、新聞などの報道からでは掴みづらい中国の現状や今後の動きを把握する意味からは、今後中国への進出を検討している中小企業や、現代のビジネスマンの基礎知識としても、非常に有効な報告書です。 全文は200ページに及ぶため、要点を、私見を交えてまとめてみたいと思います。 【現状分析】 1.中国経済の現況 2.日中貿易の動向 3.日本の対中直接投資の動向 4.中国の投資環境の変化 5.日系企業の事業運営動向および問題点・課題 1.中国経済の現況 2001年に日本の3分の1に過ぎなかった中国のGDPは、2003年から2007年まで2桁成長を続け、2010年には日本のGDPを抜いて世界第2位となりました。
中国の向こう5年間の基本政策を決定する5ヵ年規画は、2011年から第12次5ヵ年規画が始まっていますが、この12・5規画における中国の目標年平均成長率は7.0%となっています。 2011年の目標成長率は8.0%ですが、2010年の実績が10.3%であることからすれば、年平均で7%という目標は容易に達成される水準であると考えられます。 年平均で7%ということは、10年後にはGDPが倍になる計算であり、実際には7%以上の成長率が予想されますので、5年〜7年後には、中国のGDPは日本の倍以上になると考えられます。
しかも、一人当たりGDPで見ると、中国は世界で100位以下です。 いかに余力のある世界第2位であるかが分かります。 2.日中貿易の動向 中国の経済の発展に伴い、わずか10年の間に日中間の貿易額は3倍以上に増えています。 (単位:億ドル)
またこの10年間で、日本の最大の貿易相手国は、アメリカから中国に変わっています。 ≪日本の貿易総額に占める各国の割合(%)≫
3.日本の対中直接投資の動向 日本の中国への投資は、1985年〜88年の第1次ブームに始まり、現在は、中国をマーケットして捉えて進出する第4次ブームにあります。
現在の第4次投資ブームには、過去には無い特徴として、以下の事項が挙げられています。
4.中国の投資環境の変化 2006年〜2010年の11・5規画において、中国は外資利用の質の向上を打ち出し、これに関して商務部(経済と貿易を管轄)から「外資の積極的かつ有効な利用を継続、外資利用の質の向上に注力」と題するレポートが発表されました。 このレポートは、外資が経済の発展に寄与した点を評価する一方で、問題点として、ハイテク・環境・省エネ分野等の投資が少ない点、沿海部に投資が集中し中西部への投資が少ない点、質より量を重視し悪質な競争・非効率な外資誘致・優遇政策の乱発が行われた点等を挙げています。 そして、11・5規画が謳う外資利用の質の向上のために、8つの基本方針を示しています。
5.日系企業の事業運営動向及び問題点・課題 販売、生産、財務、貿易制度など、各分野で中国進出の課題はありますが、それらの中で近年最も大きな課題とされるのが人件費の高騰です。 かつての日系企業が中国に進出する最大の理由は安価な労働力によるコスト削減にありましたが、近年の目覚ましい経済発展や政府が掲げる5年間での所得倍増計画など、中国における人件費は非常に速いスピードで高騰しています。
最低賃金がGDPの伸びに合わせて毎年政策的に10%〜15%で上昇しているため、このスピード以上で、工場としての中国からマーケットとしての中国への切り替えを進めなければ、毎年黒字は減少していくと考えられます。 (2011.05.26) |
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