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役員の責任限定契約

  平成24年9月7日開催の第167回法制審議会において、会社法制の見直しに関する要綱が示されました。要綱においては、監査・監督委員会設置会社制度、多重代表訴訟制度、特別支配株主の株式売渡請求(キャッシュ・アウト)などが審議されていますが、今回は、その中から取締役及び監査役の責任の一部免除について取り上げてみたいと思います。

  現行の会社法において、取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、株式会社に対して、これによって生じた損害を賠償する責任を負い(法423条1項)、その責任は、総株主の同意がなければ免除することができないこととされています(法424条)。
  または、株主総会の特別決議により、代表取締役であれば報酬の6年分、平取締役であれば4年分、社外取締役、監査役、会計監査人、会計参与であれば2年分を限度して、これを超える額については責任を免除することができるとされています(法425条1項)。

  上述の通り、役員の責任を減免するには、総株主の同意又は株主総会の特別決議を要するのが原則ですが、上場企業など、株主が多数存在する場合には、実際に責任を減免することは実務上極めて困難です。
  そこで、社外役員(株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の @業務執行取締役 若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないもの(法2条15号、16号))については、社外役員の成り手を確保するという趣旨から、定款に定めを置き、責任限定契約を結ぶことで、その責任の範囲を一定の範囲内に予め限定することができることとされています(法427条1項)。
  『第424条の規定にかかわらず、株式会社は、社外取締役、会計参与、社外監査役又は会計監査人(以下、「社外取締役等」)の第423条第1項の責任について、当該社外取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内で予め株式会社が定めた額と A最低責任限度額 とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を社外取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができる。』

  下線@の“業務執行取締役”とは、代表取締役及び代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたものをいいます(法363条1項)。“業務を執行する”とは、取締役会で決議された事項について、その実務を行う、実行することを意味すると考えられますので、従って、月に一度取締役会に参加し、決議のみを行うといった取締役は、業務執行取締役に該当しない、つまり社外取締役であると考えられます。

  下線Aの、最低責任限度額とは、法425条1項に定める、
代表取締役又は代表執行役=6年分の報酬
代表取締役以外の取締役(社外取締役を除く)又は代表執行役以外の執行役=4年分の報酬
社外取締役、会計参与、監査役又は会計監査人=2年分の報酬
を指します。

  要綱においては、社外役員か否かという区分ではなく、業務執行に係るか否かにより区分し、業務執行に係らない役員は、従前通り2年を限度とする責任限定契約を締結でき、業務執行に係る取締役は、責任限定契約を締結することができないことになります。
  従って、例えば、過去に代表取締役であった者が現在は平取締役として、取締役会の決議にのみ参加しているような場合、現行法では社外取締役とはならないため責任限定契約を結ぶことはできませんが、要綱においては、社外性要件は求められませんので、現に業務執行に関わっていないのであれば、責任限定契約を結ぶことができることになります。
  同様に、株主総会の特別決議で免除できる最低責任限度額の範囲についても、社外性要件は求められていませんので、代表取締役が6年分という点は変更ありませんが、現に業務執行に関わっている業務執行取締役は4年分、その他取締役は2年分とされます。

現行の会社法

代表取締役 6年分
社外取締役以外の取締役 4年分
社外取締役 2年分

要綱

代表取締役 6年分
業務執行取締役 4年分
その他取締役 2年分

(要綱より)

  『株式会社は、取締役(業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人であるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人との間で、第427条第1項に定める契約(責任限定契約)を締結することができるものとする。』
  『最低責任限度額(第425条第1項)の算定に際して、職務執行の対価として受ける財産上の利益の額に乗ずべき数は、次のアからウまでに掲げる役員等の区分に応じ、当該アからウまでに定める数とするものとする。

ア 代表取締役又は代表執行役 6

イ 代表取締役以外の取締役(業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人であるものに限る。)又は代表執行役以外の執行役 4

ウ 取締役(ア又はイに掲げるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人 2』

法務省『会社法制の見直しに関する要綱』 (PDF)


(2012.11.26)

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