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資金調達
制度融資及び公庫からの資金調達について

 都道府県や市区町村が扱う制度融資及び国民生活金融公庫などの公庫からの資金調達について、その概要、ポイント等をまとめてみました。
 ネットや書籍などでは制度融資等に関する情報が溢れており、資金調達のご経験のない経営者には非常に難しいことのように感じられるかもしれません。しかし、これらはそもそも個人や中小企業を対象にしている制度ですので、決して難しいことはありません。
 ポイントを押さえてぜひこれらの制度を有効活用してください。

【制度融資】
  1. 概要
     都道府県や市区町村による融資です。
     都道府県や市区町村によって内容が異なりますが、区であれば通常、一部の利子を負担してもらえる利子補給制度がありますので、創業当初の利子負担を少しでも減らしたい経営者には向いている制度であると言えます。
     他方、都の制度は利子補給はありませんが、区に比べてメニューが豊富です。従って、要件に当てはまるような会社(or事業)であれば、区よりも有利に資金調達が行える可能性があります。
     どちらを使うべきかについては、両方のメニューを一列に並べて検討することになりますが、調達可能額、利子負担の状況を見ながら検討する必要があります。
     メニューについては都や区のHPから確認できます。また、実行する際には取引銀行に話をしてもいいですし、都や区に問い合わせて信金・信組を中心に複数社紹介してもらうこともできます。
     なお、税金で賄われている制度ですので、納税している場所(=本店所在地)の都道府県及び市区町村での申し込みとなります。

  2. 追加借入
     制度融資では創業資金(創業当初の融資)がよく使われますが、その後、事業が軌道に乗ってくると新たに資金需要が出ることが多いと思います。このような場合、制度融資で新たに追加借入することも可能です。
     但し、いくつかポイントがあります。同じ資金需要(同じメニュー)で調達することはできないほか、前回借り入れた資金について、その後の運用実績が見られます。また、実績を見るという考えからも、通常、新たなメニューによる借り入れであっても、前回の借入から1年程度空けないと追加借入は厳しいです(但し、1年空けないと絶対だめというわけではありません。)。
     なお、追加借入する際には、都の制度と区の制度を併用することも可能です。

  3. 信用保証協会
     制度融資は、都も区も信用保証協会を利用します。

【信用保証協会】
  1. 概要
     制度融資は必ず保証協会を使います。従って、制度融資の実行の可否は保証協会の判断によることになります。
     保証協会は画一的なスコアリングではなく、事業計画書などを見ながら事業の内容を検討しますが、創業後の追加借入のような場合には、決算が1期必要になります。この場合の決算は12ヶ月なくても大丈夫です。

  2. “枠”について
     よく、保証協会には保証を付けてもらえる“枠”があるようなことが言われますが、実際にはそのような枠はありません。
     強いて言えば、創業資金の保証は2,500万円までであるほか、2,500万円を超えると100%の保証ではなくなるため(保証割合が80%になり、貸し倒れた際には金融機関が損失を20%負担するため)、実務上2,500万円が上限になっていることがあげられます。
     “枠”というと2,500万円までは自由に何度でも借り入れができるような印象を受けますが、上述のとおり、同じメニューでは借入はできません。

  3. 担保
     代表者による保証は求められますが、第三者による連帯保証は基本的に求められません。
     また、借入が8,000万円を超えると不動産等の担保が必要になります。


【公庫】
  1. 概要
     政府系の金融機関として、代表的なところで国民生活金融公庫があります。中小企業金融公庫もありますが、こちらは主に中堅企業が対象となります。どちらに相談すべきか、という問題がありますが、2008年10月に合併しますので入口の心配は今後は無くなります。

  2. メニュー
     普通貸し付けを行うほか、創業資金なども出しています。制度融資にない大きな特徴として、一定の場合に無担保・無保証で借りられる制度があります。マル経融資と新創業融資制度です。

  3. マル経融資
     これは商工会議所等の推薦を受けて申し込むものですが、6ヶ月間、商工会議所等の経営指導を受けて推薦が得られると、自動的に1,000万円まで無担保・無保証で借入が可能です(6ヶ月間という期間については、決算の状況、借入の返済状況、公共料金の支払状況等により異なります。)。
     2期分の決算が必要な他、実行までに半年程度の期間を要するため、急を要する場合には向いていませんが、前もって準備する期間がある場合には検討する価値は大いにあると思います。明確な資金需要が無くても、将来に備えて指導実績を作っておくのも賢い選択肢かと思います。なお、指導は月に1回の打ち合わせです。

  4. 新創業融資制度
     創業時、もしくは創業間もない会社(or事業)について、1,000万円を上限として、無担保・無保証で借入が可能です。但し、これには2点ほどポイントがあります。
     1点目に、通常適用される金利に1.2%上乗せされます。
     そして2点目に、自己資金で3分の1以上の資金を用意する必要があります。1,000万円の資金需要がある場合、334万円は自己資金で、残りの666万円を借り入れることになります。1,000万円借りるのであれば、自己資金で500万円用意する必要があります。
     そして、この自己資金について注意が必要ですが、外形的に見せ金に見えるような自己資金は自己資金としてカウントされません。具体的には、タンス預金から出資して、その2倍を借り入れるような場合です。新族から出資を受けたり、自分が株で運用していたお金を出資したような場合には、振込人の名義や株の取引報告書などで運転資本が本当に存在することが客観的に確認できますが、タンス預金は、一時だけ第三者からお金を借りてきて出資をしているのと外形的に区別がつかないため、自己資金としてカウントされないことになります。友人から出資を受けたような場合には、友人との関係等も調査されますので、ご注意ください。

  5. 第三者保証が不要な融資制度
     代表者の保証は必要ですが、第三者による保証が不要な制度もあります。
     決算が2期必要になりますが、4,800万円(実務上は2,000万円程度)を限度に借入が可能です。但し、通常適用される金利に0.65%上乗せされます。

     4.と5.は金利が上乗せされますが、不動産等の担保・第三者による保証がある場合には金利の上乗せはありません。



【最後に】
  1. ノンバンクについて
     保証協会も公庫も、ノンバンクが入った時点で融資はできなくなります。背に腹は代えられないかもしれませんが、ノンバンクを利用する際には、今後の資金計画を慎重に検討してください。ノンバンクを利用するのであれば、取引銀行に相談した上で系列のノンバンクを紹介してもらうのも一案かと思います。

  2. ブローカーについて
     制度融資や公庫からの借入は難しいことはありませんし、電話や窓口で担当者がとても丁寧に相談に応じてくれます。経営者に知識がないことに付け込み、さも難しいようなことを言ってフィーを取るブローカーがいますが、そのようなブローカーは利用しないことをお勧めします。
     もちろん、利益計画書の作成を依頼した場合などは別の仕事ですのでフィーが発生するのは当然ですが、ブローカーが口利きをしたからといって審査が甘くなるわけではありません。何より、駆け引きが求められるレベルの話ではありませんので、安心して窓口などで相談してみてください。
     もちろん当事務所にご相談頂いても対応させて頂きますし、当事務所から相談員の方にご連絡することもできますので、お気軽にご連絡ください。

(2008.6.9)


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