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相続の承認及び放棄について
相続は、被相続人の死亡と同時にスタートしますが、相続人が相続する被相続人の遺産には、預貯金等のプラスの財産だけでなく、借金等のマイナスの財産も含まれるため、被相続人が莫大な借金を残している場合、相続人が被相続人の債務を引継がなくてはなりません。 そこで、民法では、相続人が思いもよらない不利益を被らないよう、被相続人の財産を全て受け入れる「単純承認」以外に、「限定承認」と「相続放棄」の2つの選択肢を設けています。 相続が開始すると、相続人は原則として3か月の熟慮期間内に「単純承認」「限定承認」又は「相続放棄」のいずれかの意思表示をすることになります。 また、いったん相続の承認又は放棄をすると、熟慮期間が経過する前であっても撤回することはできません(民919)ので、それぞれの注意点をしっかり把握し、後々トラブルがないよう慎重に判断する必要があります。 単純承認 単純承認とは、相続人が被相続人の財産上の権利義務を無限定に承継することをいいます。(民920)単純承認した場合には、被相続人の資産だけでなく借金等の債務なども全て引き継ぐことになります。 単純承認は特別な手続きが必要なものではなく、相続があった場合には原則として単純承認があったことになります。つまり、限定承認や放棄をしなければ、単純承認をしたことになるのです。 また、限定承認や放棄を希望していたとしても、相続財産を処分、隠匿又は私消した場合は、単純承認があったこととみなされます(民921)ので注意が必要です。 限定承認 限定承認とは、相続によって得た財産の範囲内で、被相続人の債務及び遺贈を弁済する責任を負うことを条件として相続を承認するというものです(民922)。一般に、被相続人の債務がどれくらいあるのかわからない場合などに限定承認が選択されます。 限定承認は、相続財産の範囲内で債務を引継ぐということから、一見有利にみえますが、その選択には慎重な対応が必要です。 実際、限定承認の手続きは非常に煩雑です。 まず、相続人が複数いる場合には、共同相続人全員で行う必要があります(民923)。また、相続財産を調査して財産目録を作成し、3か月の熟慮期間内に家庭裁判所に限定承認の申立をします。その後5日以内に債権者に通知し公告をしなければなりません(民927)。その上、債務の弁済のために相続財産を売却する必要がある時は、原則として競売に付さなければなりません(民932)。 簡単に言うと、限定承認するということは被相続人の破産手続をするようなもので、実際は弁護士に手続きを依頼することになると思いますので、その費用もかかることになります。 また、通常の相続(単純承認)では、被相続人から相続人に取得価額の引継ぎが行われ、相続の段階で所得税の課税が生じることはありませんが、限定承認の場合は、相続開始の日に被相続人から相続人に相続財産が時価で譲渡されたものとみなされます(所法59)。 その結果、相続財産が土地等の譲渡所得の起因となるものであれば、被相続人に対して譲渡所得課税が行われることになり、被相続人の準確定申告で譲渡所得の申告を行う必要が出てきます。 相続財産の中に含み益の大きいものがある場合譲渡所得税も多額となり、結果として手元に残る財産も減少します。 従って、よほど多額の財産が残る可能性がなければ、相続放棄をしたほうがよいと言えます。 相続放棄 相続放棄とは、被相続人の財産を一切承継しないということで、被相続人の財産よりも債務が明らかに多い場合などに選択されます。 相続放棄は、3か月の熟慮期間内に家庭裁判所に申述書を提出しなければなりませんが(民938)、限定承認とは異なり、各相続人が単独で行うことができます。 この申述書が受理されることにより、相続放棄の効果が発生します。 また、相続の放棄をした者は、はじめから相続人でなかったものとみなされる(民939)ため、例えば被相続人の子が全員相続放棄をすると親が相続人になり、親も相続放棄をすると兄弟が相続人になるというように、相続人が次の順位者に変わっていきます。 相続放棄をしたことを知らせずにいると、次の順位者が多額の債務を引継ぐことになるため、相続放棄をする場合、次の順位者に相続放棄をしたことを早急に知らせる必要があります。 ※事実上の相続放棄 事実上の相続放棄とは、民法上の相続を承認するものの、財産を取得しないことを遺産分割協議書に記載することをもって相続の放棄とすることをいいます。 民法上の正式な放棄と事実上の放棄は、明確に区別する必要があります。 まとめ 「単純承認」「限定承認」又は「相続放棄」のいずれを選択するかの判断は、被相続人の財産及び債務をどれだけ正確に把握できるかどうかにより決まってきます。 また、一度選択すると、特段の場合を除いて撤回ができないこととなっています。 とりあえず「限定承認」とせず、なるべく早く被相続人の財産を整理し、いずれを選択するか慎重に決断しましょう。 以下、それぞれの特徴について表にまとめてみました。
(2009.11.25) |
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