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居住の用に供していた土地の相続税評価について
相続税の計算において、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族(以下、「被相続人等」といいます。)の居住の用や事業の用に供されていた土地を相続人が取得した場合には、評価額についての特例がありますが、今回は居住の用に供されていた土地等を中心に纏めたいと思います。 1、概要
個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、次の区分に応じ、それぞれに掲げる要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した土地等は、240uまでの面積については、20%評価(80%評価減)となる特例です(措法69の4)。
なお、その宅地等が2以上ある場合には、主としてその居住の用に供していた1の宅地等に限ります。 2、事例
(1)概要 甲は、(3)記載の区分所有ビルを所有していました。甲は、1階及び2階で診療所を経営し、8階に配偶者である乙と居住していました。 甲が死亡したことにより、5階〜8階建物及び土地持分1/2を乙が取得し、8階部分については相続開始時から申告期限まで引き続き、乙の居住の用に供しています。また、1階〜4階は、Aが相続し、相続後すぐに1階及び2階の診療所を廃業し、親族でない者が経営するクリニックに賃貸しました。このような場合における宅地等の相続税評価額はどのようになるでしょうか。 なお、甲は、当該ビル以外に不動産は所有しておりませんし、事務所として賃貸の用に供している部分は、相続開始時から申告期限まで引き続き、事務所用として賃貸の用に供しております。 (2)親族図 (3)所有ビルの状況 相続開始直前の区分所有ビルの使用状況は以下の通りです。各階の床面積は、同じです。なお、土地全体の更地としての相続税評価額は、4億円です。
※1:借家権割合30%、借地権割合70% (4)土地の相続税評価額 @乙取得分 (ア)8階部分に対応する土地 被相続人である甲の居住の用に供されていた宅地等を配偶者である乙が取得したため、特定居住用宅地等の要件を満たし、かつ、8階に対応する地積は100u<240uであるため、その全てについて、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。 4億円×1/8×20%(1−80%)=10,000千円 (イ)5〜7階に対応する土地 事務所用として賃貸の用に供していることから、貸家建付地として評価することになります。 4億円×3/8×(1−70%×30%)=118,500千円 AA取得分 (ア)3〜4階に対応する土地 被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等で相続後も引き続き、当該貸付事業の用に供しています。なお、貸付事業としての小規模宅地等の特例は200uまでを限度とし50%評価減の適用を受けることができますが、特定居住用宅地等として既に100uの適用を受けていますので、116.66u((400u−100u×5÷3)÷2)についてのみ、貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。 4億円×2/8×(1−70%×30%)−4億円×116.66/800u×(1−70%×30%)×50%=55,959千円 (イ)1〜2階に対応する土地 被相続人の事業のように供されていた宅地等ですが、相続開始後、当該事業を廃業していることから、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。また、甲の死亡時点、貸付けの用に供されていないことから、更地としての評価(貸家建付地の評価ではない)となります。 4億円×2/8=100,000千円 B総計:284,459千円 3、まとめ
従前は、1棟の建物については、そのうち一部でも居住用又は事業用宅地等の要件を満たす土地が含まれている場合には、その土地全てに80%評価減の適用を受けることができました(面積要件あり)が、平成22年度税制改正により小規模宅地等の要件が厳格化され、居住用等の宅地の取得者である要件を満たす親族の持分に対応する部分のみに限定されることになりました。 そのため、上記例では、改正前においてはその全てが特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例を適用(240uまで80%評価減)できましたが、現在では、配偶者が取得した8階部分に対応する土地部分しか特定居住用宅地等の特例を適用できないことになっています。 従前の制度に基づきタックスプランを策定されている場合には、見直しをする必要があるでしょう。 (2012.6.14) |
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