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利益計画
「売上高1億円から20億円の会社の経理〜 経理の方へ! 社長が求める経理 〜」

 社長と社員数名でやってきた会社が徐々に大きくなるにつれ、経理業務も増えてきますし、何より経理に求められる業務内容が変わってきます。今までのように記帳を会計事務所に丸投げし、月次試算表を2ヶ月もかけて締め、銀行に支払に行っていても社長は喜びません。
 売上が億を超えてきたあたりから、社長の頭には新規事業の開拓、社員の増員、引越し、資金調達、株式公開といったことが思い浮かんでいるはずです。であるならば、経理の仕事も従前の通りでは社長のニーズには応えられなくなってきます。今までの仕事からもう一歩進んで、社長のイメージにあった、社長の役に立つ経理を行うべきです。

 今回の記事の対象は、会社の規模が大きくなり、今後も事業を拡大したいと願う、成長志向のある会社です。ぜひ経営に役立つ、社長に喜ばれる経理を行ってください。全てを書ききることはできませんが、少しでもそのお役に立てられれば幸いです。

【利益計画の策定、役員会の実施、数字の分析】
 もし今、利益計画を策定していなく、役員会も毎月行っていなく、経理から社長に数字の分析結果の報告を行っていなければ、すぐに行ってください。
 社長の頭の中には、今後何をどうやって売るか、仕入をどうするか、人員をどうするか、設備投資をどうするかといったことが既にイメージとしてあります。しかしそれは具体的な数字にはなっていないはずです。社長のイメージを数字にすると、「来期は売上×円、粗利は×円、人件費は×円、利益は×円、〜頃資金が苦しくなるので×円の資金調達が必要」といったことが明確になります。まずはそれを社長に報告してください。これだけでも社長は喜ぶはずです。

 利益計画書を策定する際の留意点は多々ありますが、特に次の2点に留意してください。
 1点目は、社長のイメージにあった利益計画書をつくること。エクセルなどで簡単な表を作成すれば十分ですが、定期的に進捗を社長に報告して、確認してもらったほうがいいです。苦労してできあがったものが社長のイメージと異なれば、苦労が無駄になってしまいます。
 2点目に、細かい数字にはとらわれないようにし、基準値を定めて策定することです。凝りだすと、例外的な売上や、金額的に小さい取引まで計画書に入れたくなりがちです。しかし、例えば100万円を基準値と定めたら、100万円未満の小さい取引は一切無視します。売上について50万円の取引までこだわったならば、仕入も経費も設備投資も、50万円までこだわらないと整合性がとれず、おかしな利益計画書ができてしまいます。社長がいくらまで詳細なデータを必要としているのかを確認して、それに合わせて基準値を設定する、そして勇気をもってざっくり作る、ということが肝要です。


 利益計画ができたら、次に、その利益計画と実績値を比較してください。具体的には、別途エクセルで利益計画と試算表から拾った実績値を比較するかたちにします。現在使っている会計ソフトに計画値を予算として入力しても可能ですが、その場合にはやや難易度があがりますので、まずはエクセルでいいと思います。
 そして、比較を行うと必ず差異が出ます。差異が出ること自体は何も問題ありませんので、なぜ計画と実績がずれたのかを分析することが必要です。おそらく当初は、差異の原因は“計画値の精度が低い”ことに起因すると思います。計画値の精度が原因であれば、それは次回の策定時に精度を上げられるように努力すれば問題ありません。それよりも重要なのは当然、その他の原因分析です。売上が計画に達しなかったのであれば、販売数量が減ったのか、単価が下がったのかを分析します。そして、現場責任者に「なぜ販売数量が減ったか」「なぜ単価が下がったか」について報告してもらいます。問題点を洗い出して現場に提起することまで行うのが経理の仕事です。ただ単に試算表を出力して社長に手渡したり、「売上が×円増えました、経費が×円減りました」程度の報告であれば、社長は日本語も読めますし、数字も読めるので意味がほとんどありません。もう少し会計ソフトが発達したら、勝手にソフトが読み上げてくれるでしょう。原因を分析して現場に投げる、そこまで行うのが望ましい分析であり、経理の仕事です。

 分析が完了したら、これらを報告する場として、役員会を行うように社長に提案してみてください。営業会議など役員会に代わるミーティングが行われているのであれば、その場に参加してください。いずれにしても、経理から計画値の達成状況、差異の原因分析を報告してください。30分もあれば十分です。1ヶ月にたった30分で、社長のイメージを数字とともに役職員が共有して、差異の原因を把握し、今後の方針を決めるのに役立つのであれば、非常に有意義な会議になるはずです。30分で皆が同じ方向を向けるのであれば、プラスの影響はあってもマイナスの影響はないはずです。


【月次決算】
 計画値と実績値の報告を行うに当たって必要になるのが、タイムリーな月次決算です。会計事務所から試算表を入手したり、自前で作成するのが翌月の後半になるようでは遅いです。翌々月になっているようであれば論外です。
 もちろん、ただ単に試算表を社長に手渡すだけで、社長も試算表を結果報告程度にしか捉えていないのであれば、早く締める必要はありません。しかしこれでは、試算表が学校の通信簿と同じ意味合いになってしまいます。
 試算表は、計画値との比較を通して今後の経営方針を決めるための基礎資料です。経営方針に影響を与えるのであれば、1日でも早いにこしたことはありません。

 タイムリーに試算表を締めるポイントは大きく3つあります。
 1つ目は、毎日行われる取引は日々集計しておき月末に合計額で1行で入力すること、2つ目は、月次決算の目的に沿った範囲で月次処理を行うことです。
 これだけ言ってもよく分からないと思いますので、もう少し補足しますと、例えば、毎日出荷があり、翌月10日に売上高を集計して先方に請求書を出す場合、10日の締めを待っていたら月次は締まりません。ポイントは日々の出荷高を集計しておくことです。そして、31日がきたらその合計額を仕訳1行で「(借)売掛金 ××(貸)売上 ××」と起票します。そして2つ目のポイントですが、この場合に、日々の出荷額の合計額と、10日に計算した金額はずれても何も問題ありません。ずれる原因は色々あると思います。値引、返品、計算間違えなどがあるでしょう。しかし、はっきり言って、社長はそのような小さな誤差には興味がないはずです。もちろん本決算では1円までしっかり合わせる必要がりますが、月次決算の目的(タイムリーな試算表で経営方針の決定に貢献する)からすれば、多少ずれても全く影響はありません。金額がずれたのであれば、役員会が終わった後にゆっくり直せばいいだけです。
 もちろん、誤差が大きくなるようでしたら、それは看過できません。単月の利益が100万円の会社で50万円ずれたら、月次決算の意味がなくなります。他方で、1億円の利益が出る会社であれば、100万円のずれは全く問題ないはずです。私の個人的な感覚では、単月の損益の5%程度はずれてもいいと思っています。数%にこだわって社長への報告が遅れるのであれば、数%ずれても1日でも役員会を行ったほうが経営には役立ちます。
 3つ目のポイントになりますが、とは言え、あまり急いで数字を作ってもミスが増えますし、数字を作る側としては不安なものです。

 そこで、月次決算に当たっては、下記の3点を行ってください。
 1) 売上だけは注意を払って大きなミスをしないようにする。そのために、数字を営業の人に見てもらい感覚的に違和感がないか確かめてもらうほか、経理サイドで前月以前との増減分析を行う。
 2) 試算表上の現預金残高と、現金残高、通帳残高が一致することを確かめる。
 3) B/S科目は必ず全て明細を作成し、前月の明細と見較べながら二重計上、滞留がないか確かめる。
 この3点をしっかりと行えば、月次の数字の95%は正しいです。


 月次決算は1年に12回しかチャンスがありませんので、少しでも無駄にしないように、理想は翌月1日、遅くとも翌月3日には試算表を締めるようにしてください。業種にもよりますが、売上が2億円以下程度の会社であれば3日もあれば十分です。現在会計事務所に記帳を依頼しているのであれば、お互いに協力して、早く試算表が出るように話し合ってみてください。

 利益計画書の策定やタイムリーな月次決算は、本格的に取り組もうとすれば難しい仕事ですので、まずはシンプルに、少しずつ挑戦してみてください。軌道に乗せれば、今までとは違う、一歩進んだ経理ができるはずです。


(2008.3.4)

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