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借地権
借地権を設定した場合の税務上の取扱いについて
借地取引について、法人間の借地権の設定に係る税務上の取り扱いについて取り纏めたいと思います。 なお、借地権者(借地人)及び借地権設定者(底地所有者)ともに法人であること、また、主に借地権を設定した時点における法人税の課税関係を記載していますので、ご留意ください。 1、借地権課税制度の概要 税務上の借地権とは、他人が所有する土地を使用収益する権利をいい、建物の所有を目的とする借地権のみに限定されるものではなく、何らの施設を設けない物品置場でも対象となります。 ただし、一般的には借地借家法の対象となる堅固な構築物の所有を目的とするものが理解しやすいでしょう。 以下の図のように、A社が所有する土地をB社が賃借し、建物を建設して所有するようなケースにおける、A社が所有する土地をB社が使用収益する権利です。 借地権は、借地借家法により借地権者の権利が強く保護されていることから、借地権設定者は、自分が所有する土地を利用する権利が低下し経済的優位性が減少することから、借地権の設定にあたり権利金を授受することが一般的に行われてきました。 そこで、税務上は借地権を設定した場合に、通常権利金を収受する慣行にある地域においては、権利金の授受を行うことを前提とした立場にたって、課税関係を整理しています。 また、税務上は、普通借地権と定期借地権を特段区別していないことから、一般的には定期借地権に対しても普通借地権同様の問題が生じる可能性があります。 なお、相続税評価上、借地権割合が30%未満の地域については、原則として、権利金を収受する慣行が無いものとして取り扱われています。 したがって、借地権を設定した時に権利金を収受した場合には、借地権者及び借地権設定者の課税関係が生じますし、権利金を収受しなかった場合においても本来収受すべきであったものとして、両者の課税関係が生じる可能性が生じます。 以下、それぞれの課税関係について説明します。 2、借地権設定者の課税関係 (1)権利金の授受がある場合 借地権設定者が借地権の設定にあたり、権利金を収受した場合には、当該権利金を益金(収益)に計上することになります。 一方、借地権を設定したことにより土地の時価が50%以上下落したような場合には、当該土地の帳簿価額のうち時価が下落した割合相当額だけ損金(費用)に計上することになります(法令138条)。
したがって、権利金収入と借地権譲渡原価の差額に対して法人税が課税されることになります(マイナスの場合には、課税所得のマイナス効果となります)。
(2)権利金の授受が無い場合 権利金を収受する慣行がある地域において、借地権の設定があったにもかかわらず権利金の授受が無い場合には、「相当の地代(適正な地代)」を収受しているかどうかにより課税関係が異なります。 なお、土地の更地価額に対して年6%程度のものであるときは、「相当の地代」として取扱うこととされています(法基通13-1-2)。 なお、この場合の「相当の地代」とは、更地価額に対して年6%でなければならないというものではなく、適正な地代を意味すると解されます。 ①相当の地代を収受している場合 借地権の設定にあたり、「相当の地代」を収受している場合には、特段、借地権の課税関係は生じず、受け取った地代相当額を毎期益金に計上することとなります。
②相当の地代を収受していない場合 借地権の設定があった場合において、通常権利金を収受する慣行があるにも拘わらず、権利金の授受が無く、かつ、「相当の地代」の授受もないときは、以下の算式により計算した金額相当額の贈与があったものとして取り扱われます(法基通13-1-3)。 土地の更地価額×(1−実際地代/相当の地代)=権利金の認定額
3、借地権者の課税関係 (1)権利金の授受がある場合 借地権者が借地権を設定した場合に権利金を支払った場合には、当該金額は「借地権」として資産に計上することになります。
税務上は、借地権は減価償却資産としては取り扱われておりませんので、普通借地権及び定期借地権ともに償却することはできません。 したがって、他社に売却するか借地期間満了により借地権設定者との間で立退料等の授受をすることにより精算するまで支出額が資産として計上されることになります。
(2)権利金の授受が無い場合 ①相当の地代を収受している場合 借地権の設定にあたり、「相当の地代」を収受している場合には、特段、借地権の課税関係は生じず、支払った地代相当額を毎期損金に計上することとなります。
②相当の地代を収受していない場合 借地権者と同様に贈与があったものとして取り扱われることになりますので、2(2)Aの算式に基づく金額相当額について受贈益として課税の対象となります。
借地権者は受贈益に対して借地権設定時に課税されることになりますが、当該借地権を他社に譲渡したり、契約満了に伴い立退料等の精算が行われた段階で原価として損金に算入されることになります。 4、例外的な取扱い (1)無償返還に関する届出書の提出 上記1〜3は、借地借家法により借地権者の権利が強固なものであることを前提とした取扱いがなされていますが、親子会社間等の利害の共通する関係においては、契約期間満了時において第三者間におけるような権利の主張がなされることも考えにくいこともあり、一定の要件を満たす場合には、借地権の贈与があったものとする取扱いをしないこととされています。 この場合には、相当の地代(適正な地代)を収受しているかどうかにより課税関係が異なり、相当の地代を収受していない場合には、相当の地代と実際地代との差額について、毎期贈与があったものとして取り扱われることになります(法基通13-1-7)。 なお、借地権の贈与認定の無い要件は以下の通りです。
上記要件を満たすことにより、借地権の認定課税の問題は生じないことになります。 なお、上記取扱いは、借地権者としての権利を主張しないことを前提としているため、権利金を一部でも支払った場合には、適用がありません。 また、上記要件を満たす借地権の設定があった場合において、「相当の地代」の授受が行われていない場合の課税関係を以下に記載します。 ①借地権設定者の課税関係 「相当の地代」に満たない地代しか授受していない場合には、相当の地代と実際地代の差額に対して贈与があったものとして取扱われます。
②借地権者の課税関係 借地権者においては、相当の地代に満たない金額しか支払っていないことから、当該金額だけ、所得が多く計上されておりますので、何ら課税関係が生じることはありません。 あえて仕訳を示すと以下のようになります(益金と損金の両方が計上されることから、課税所得に影響はありません)。
(2)定期借地権設定に係る前払地代 定期借地権の設定時において、借地権者が借地権設定者に対して、借地に係る契約期間の賃料の一部又は全部を一括前払いの一時金として支払うことを取り決めた上で、両者間で一時金の授受を行う場合において、以下の要件を満たすときは、その他の一時金(権利金、保証金等)の授受とは別に、借地権者においては、一時金を「前払費用」として処理し、借地権設定者においては、一時金を「前受収益」として処理することとされています(平成17年1月7日付国税庁文書回答事例)。
5、まとめ 借地権取引については、税務上の取扱いも複雑となっており、上記で記載した事項以外にも様々な権利関係や取引が想定されます。 また、借地権設定時のみに拘わらず、借地期間中、借地契約満了時においても検討する必要があります。 関係会社間や重要な取引関係のある会社間における取引において、思わぬ課税問題が生じないよう事前の検討を十分行う必要があるでしょう。 (2009.12.30) |
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