"race to the bottom"
日本では安倍首相の号令の下、法人税の引き下げが議論されていますが、今、世界の国々では、法人税の引き下げや労働規制や環境規制の緩和など、外資企業を誘致するための施策が次々と取られています。
企業や人のグローバリゼーションが進む中で、企業意欲を高める法人税の引き下げや、小さな政府の下に行われる規制緩和、それに伴う税金等の費用負担の軽減は望ましいものですが、本来徴収されるべき税金が徴収されず、社会的に必要とされる行政サービス、人権・環境保護等も最低レベルに突き進んでいく可能性があり、このような動きは"race to the bottom"とも言われています。
マクロ的な話はさておき、先進諸国やアジアの国々の現在の法人税率(実効税率)は、以下のとおりです。
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現行実効税率 |
日本(東京) |
38.01% |
アメリカ(カリフォルニア) |
40.75% |
イギリス |
24% |
フランス |
33.33% |
ドイツ |
29.55% |
中国 |
25% |
香港 |
16.5% |
台湾 |
17% |
韓国(ソウル) |
24.2% |
シンガポール |
17% |
インドネシア |
25% |
ベトナム |
25% |
フィリピン |
30% |
アメリカは、州によって35%〜45%程度ですが、アメリカと日本だけ突出して高いことが分かります(世界1位、2位)。
日本では、H24.3期までの実効税率は40.69%でしたが、その後引き下げられ、現在は復興特別法人税が上乗せされていますが、H27.3期で復興特別法人税が終了すると、実効税率は35.64%となります。
世界の趨勢を見る上で、上記の国々の、最近の法人税率の推移や改正の動きは以下のとおりです。
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現行実効税率 |
改正・推移等 |
アメリカ (カリフォルニア) |
40.75% |
法人税率を35%から28%に引き下げることを検討中 |
イギリス |
23% |
2009年に30%から28%、2011年に26%、2012年に24%、2013年に23%に引き下げ。2015年に20%に引き下げる予定 |
フランス |
33.33% |
近年は増減なし |
ドイツ |
29.55% |
2008年に38.36%から29.51%に引き下げ |
中国 |
25% |
2008年に33%から25%に引き下げ |
香港 |
16.5% |
2008年に17.5%から16.5%に引き下げ |
台湾 |
17% |
2010年に25%から17%に引き下げ |
韓国(ソウル) |
24.2% |
2009年に27.5%から24.2%に引き下げ |
シンガポール |
17% |
2008年に20%から18%、2010年に17%に引き下げ |
インドネシア |
25% |
2009年に30%から28%、2010年に25%に引き下げ |
ベトナム |
25% |
2009年に28%から25%に引き下げ。 2014年22%、2016年に20%に引き下げる予定 |
フィリピン |
30% |
2009年に、35%から30%に引き下げ |
ヨーロッパは地理的な特性もあり早い段階で法人税率の引き下げが行われていましたが、それでもヨーロッパ全体で、この5年間だけでも1.3%程度下がり(21.95%→20.6%)、アジアでは、この5年間で5.5%程度下がっています(27.99%→22.49%)。
アフリカ平均(28.65%→28.57%)、ラテンアメリカ平均(27.96%→27.61%)はあまり税率が変わっていませんが、企業が流出する側の先進諸国、そして企業誘致を進める側のアジア諸国では、法人税率の引き下げは大きなトレンドとなっており、日本もこの流れに乗れなければ、外資企業の誘致や、内資企業の流出に歯止めをかけることは一段と難しくなると予想されます。
日本も世界の潮流に乗り遅れることなく、世界と遜色のない税率に、速やかに移行してもらいたいです。
(2013.10.25)
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