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源泉所得税
「源泉所得税の課税漏れがあった場合」

 今回は課税漏れ源泉所得税額の税務を説明します。

(1)源泉徴収制度
 課税漏れ源泉税額の税務を説明する前に、源泉税の仕組みについて少し触れておきます。

 『所得税は、所得者自身が、その年の所得金額とこれに対する税額を計算し、これらを自主的に申告して納付する、いわゆる「申告納税制度」が建前とされていますが、これと併せて配当や給与その他の特定の所得については、その所得の支払の際に支払者が所得税を徴収して納付する源泉徴収制度が採用されています。この源泉徴収制度により徴収された所得税の額は、源泉分離課税とされる利子所得などを除き、例えば、報酬・料金等に対する源泉徴収税額については確定申告により、また、給与に対する源泉徴収税額については、通常は年末調整という手続を通じて、精算される仕組みになっています。』(国税庁HPに一部加筆)

 つまり、特定の所得を支払う者は納付する税金分を差し引いた代金を支払い、その支払を受けた人の税金を代わりに納付することになります。特定の所得を支払う者は支払を受ける人の税金の納税義務者になるわけです。

(2)課税漏れ源泉所得税額の税務処理
 続いて本題の課税漏れ源泉所得税額を支払い者が負担した際の税務処理について説明します。(1)でいう特定の所得の支払者が税金の徴収と納付を失念してしまったときの話になります。

 源泉所得税の課税漏れを発見した場合、まず最初にその支払のもととなる契約書において源泉所得税をどちらが負担することになっているかを確認する必要があります。

  1. 契約書において支払者負担の定めがある場合
     外国の企業との取引で費用などを支払う場合には、源泉所得税は支払者が負担する契約になっていることがよくありますが、支払者が負担することとなっているときは源泉税を徴収した後の手取額により支払金額が定められていたものとして(いわゆるグロス・アップ計算)源泉税額を算定します。支払った額が100円で源泉税の税率が20%の場合、本来の支払金額は100円÷(1−20%)=125円となり、納付すべき源泉税は125円×20%=25円となります。

  2. 契約書において支払者負担の定めがない場合
     契約書に記載されていない場合には、既に支払った金額に徴収すべき源泉税額が含まれていたものとし、既に支払った金額を基準として計算します。支払った金額が100円で源泉税の税率が20%の場合、100円×20%=20円が徴収納付すべき金額になります。
     この場合、支払を受ける者が居住者や内国法人であれば所得税法222条(不徴収税額の支払金額からの控除及び支払請求等)により基本的に支払を受ける者から当該源泉徴収漏れ分の返金等を受けることができますが、相手側が非居住者ですと日本の所得税法を適用できないので両者間の協議でどちらが負担するかを決めることとなります。

     当該源泉徴収漏れ分を相手側に請求しないこととした場合には、請求しないこととした時においてその納付した源泉徴収漏れ額に相当する金額を源泉税控除後の手取額により、代金等の追加額として支払ったものとし、その支払ったものとされる金額に対する源泉額をいわゆるグロス・アップの方法により計算し納付する必要があります。請求しないこととした源泉徴収漏れ額を20円とすると20円÷(1−20%)=25円が支払った額とされ、25円×20%=5円が納付すべき金額となります。

【仕訳例】
前提:支払金額100 源泉所得税率20% 単位:円



 支払者負担の契約がある場合と支払者負担の契約はないが支払者が負担することとなる場合では、結果として納付すべき源泉税額は同額となります。ただし、納期限については異なってきます。契約において支払者負担の定めはないが相手方に請求等をしないこととした場合、その請求しないこととした源泉徴収すべき金額に係る源泉税の納期限は、その請求をしないこととした日の翌月10日となります。

 上記のように、源泉税の徴収漏れは不納付加算税や延滞税だけでなく、グロス・アップにより本来の税額より多額の納税が発生するケースがありますので、特に注意が必要となります。

【源泉税額の計算方法のまとめ】


(関連条文等)
所法222条、所基通181〜223共-4、所基通221-1


(2008.7.7)

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