国税にかかる差押禁止財産
国税をその納期限までに納付できなかった場合、その滞納者は税務署から督促を受け、その督促を受けた後も納付がない場合には、差押え等の滞納処分を受けることになります。
なお、納期限までに納付できなかったからといってすぐ滞納処分を受ける訳ではなく、まず、納期限から50日以内に税務署から督促状が発せられ、その発せられた日から10日を経過した日までに国税を完納しない場合に初めて滞納処分を受けることになります。
滞納処分を行うに当たっては、滞納者の権利の保護のための規定が設けられています。今回はその滞納者の権利の保護にかかる規定のうち、差押禁止財産についてまとめてみたいと思います。
絶対的に差し押さえを禁止されている財産として、次のものが定められています。
①
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滞納者及びその者と生計を一にする配偶者(事実上婚姻関係にある者を含む)、生計を一にする親族の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具等 |
② |
滞納者及びその者と生計を一にする親族の生活に必要な3ヶ月間の食料及び燃料 |
③
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主に自己の労力、知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者の、その業務に欠くことができない器具等
(ただし、商品は換価を目的としているため、業務に欠くことのできないものであっても差押禁止財産から除かれます。) |
④ |
実印その他の印で、職業又は生活に欠くことのできないもの |
⑤ |
仏像、位牌その他礼拝等に直接供するため欠くことができないもの |
⑥ |
その他滞納者の生活に欠くことができない一定のもの |
滞納者の給与を差し押さえる場合、滞納者が生活を維持していくため、次の①〜⑤の金額の合計額を、その給与のうち差し押さえることができない金額として定めています。(滞納者の承諾がある場合には下記差押禁止額にかかわらず差し押さえることができます)
① |
給与から天引きされる源泉所得税に相当する金額 |
② |
給与から特別徴収の方法によって天引きされる住民税に相当する金額 |
③ |
給与から天引きされる社会保険料に相当する金額 |
④
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滞納者及びその滞納者と生計を一にする親族の最低限の生活費(滞納者及びその滞納者と生計を一にする親族が所得を有しないものとした場合に、生活保護を受ける場合のその生活保護の給付額) |
⑤
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体面維持費(その給与の金額から①〜④の合計額を控除した金額の100分の20に相当する金額。ただし、その金額が①〜④の合計額の2倍を超えるときは当該金額。) |
① |
賞与 |
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賞与及びその性質を有する給与については、その支払を受けるべき時における給与とみなして、(2)の給与の差押禁止額の規定を適用します。
その賞与の支給の基礎となった期間は、1月であるものとみなして差押禁止額を計算します。
なお、同時期に支給される給与及び賞与がある場合には、その合計額を基礎として(2)④及び⑤の金額を計算します。
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② |
退職手当 |
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退職手当についても、以下の(a)〜(e)の金額の合計額が差押禁止額として定められています。 |
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(a) |
天引きされる源泉所得税に相当する金額 |
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(b) |
特別徴収により天引きされる住民税に相当する金額 |
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(c) |
天引きされる社会保険料に相当する金額 |
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(d) |
上記(2)④において、その期間を1月として算定したものの、三倍に相当する金額 |
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(e)
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退職手当等の支給の基礎となった期間が5年を超える場合には、その超える年数1年につき、上記(d)に掲げる金額の100分の20に相当する金額(その5年を超える年数に1年未満の端数を生ずる時はその1年未満の端数をすべて切り上げて計算します。)
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③ |
社会保険制度に基づく退職年金、退職一時金等 |
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社会保険制度に基づき支給される退職年金、老齢年金、退職一時金等についても上記②の差押禁止額の規定を準用します。 |
農業、漁業、その他の職業又は事業の継続に必要な機械、器具その他の備品及び原材料等その他棚卸をすべき資産(上記(1)③に該当するものを除きます。)のうち、滞納国税の全額を徴収することができる財産で、換価が困難でなく、かつ、第三者の権利の目的となっていないものを提供したときは、その滞納者の選択により、差押をしないものとします。
(2012.1.18)
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