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執行役員
執行役員制度について

 我が国の取締役会体制の問題点から、執行役員制度を検討される企業もあろうかと考えますが、執行役員制度の概要及び税務上の取扱いについて、纏めたいと思います。

 1、執行役員制度とは
 一般的には、執行役員制度とは、「取締役会の担う①業務執行の意思決定と②取締役の職務執行の監督及び代表取締役等の担う③業務の執行のうち、この③業務の執行を「執行役員」が担当する」というものをいいます。

 導入の趣旨は、取締役会の活性化と意思決定の迅速化という経営の効率化、あるいは監督機能の強化を図るというもので、取締役会の改革の一環とされています。

 もっとも、この「執行役員制度」あるいは「執行役員」については、法令上にその設置の根拠がなく導入企業によって任意に制度設計ができることから、当該執行役員の位置付けは、役員に準じたものとされているものや使用人の最上級職とされるものなど様々であり、以下のような区分をされています。
(1) 委任型執行役員制度
   会社と執行役員との契約を法律上の「委任契約」とするケースを一般的に「委任型執行役員制度」と呼んでいます。「委任契約」は、両当事者ともにいつでも解約する自由があり、受任者の独立性が認められ、裁量が広く、その対価として「報酬」が与えられるものです。

 これは、受任者の専門的な能力に着目して委任されるのであって、任期は自由であり、委任者と受任者が対等な関係にあることが前提となっているため、(2)の「雇用契約」とは異なり、会社と執行役員との間に支配服従関係はないという考え方が前提となります。
 ただし、委任型執行役員制度を採用したからといって、労働法規制の対象とならないということではなく、実態に即して判断されるものと考えられますので、実際の制度の導入には、執行役員の権限、義務、責任等について十分検討する必要があります。

 また、会社法で規定される役員としての責任(善管注意義務・忠実義務)については、社内規定等により取締役と同様の責任を負わせることは可能かと考えられますが、原則として、執行役員は、株主代表訴訟の対象とはならないものと考えます。

(2) 雇用型執行役員制度
   会社と執行役員との契約を法律上の「雇用契約」とするケースを一般的に「雇用型執行役員制度」と呼んでいます。「雇用契約」は、雇用主と従業員の力関係が大きく異なり、支配服従関係があり、従業員は、原則として雇用主(会社)の指示に従わなければならないことになります。
 そのため、対価としては、「賃金」を収受することになり、労務提供に着目したものであり、労働法規制が適用されることになるものと考えられます。

 また、雇用型執行役員については、善管注意義務や忠実義務を社内規定で定めたとしても労働法規により、その責任追及には一定の制限がされる可能性があります。

(3) 混合型執行役員制度
   (1)及び(2)の考え方の妥協的な方法として、雇用契約の性質と委任契約の性質の両方を兼ね備えた契約とするものを一般的に「混合型執行役員制度」と呼んでいます。これは、企業により、様々な活用のされ方があり、一概に括ることができるものではありませんが、それぞれの考え方を取り入れて導入するケースがこれにあたるものと考えられます。

 2、執行役員に対する税務上の取扱い
(1) 税務上の基本的な考え方
   法人税法では、役員を「法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している者のうち以下のようなものをいう」とされています(法法2条15号、法令7条)。

 

法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。以下、②において同じ)以外の者で、その法人の経営に従事しているもの。
 


同族会社の使用人のうち、一定の要件を満たす特定株主等で、その会社の経営に従事しているもの。

(2) 執行役員の考え方
   執行役員は、上記でもみたように、一般的には、代表取締役の指揮・命令の下で業務執行を行う「重要な使用人」との位置づけであり、会社法で規定された制度ではなく、税務上も明確に役員として規定されているわけではありません。そのため、以下の理由から、原則として、税法上の役員には該当せず、また、みなし役員にも該当することがないと考えます。

 

取締役として選任されていない限り、会社の経営意思決定機関である取締役会における議決権がないこと。
 


執行役員は、業務執行に責任を負っているが、それをもって会社の経営に従事しているとは認められないこと。

   ただし、使用人から執行役員への就任に伴い、以下のような実態にある執行役員に対して退職金を支給した場合には、当該退職金については、退職手当としての課税を行うことを認めていることから、「委任型執行役員制度」のうち役員と同様に経営に従事していると認められるような「執行役員」については、「法人税法上の役員」として、種々の規定の適用を受けることがあり得ると考えます(所得税基本通達30-2の2に関するQ&A)。

 

雇用契約を終了させ、新たに委任契約が締結され、法律関係が明確に異なること。
 


執行役員の任期は1年ないし2年とされており、使用人としての再雇用が保障されておらず、任期満了時には執行役員等として再任されない限り、会社を去らざるを得ないこと。
 


法律関係を委任契約とし、報酬、福利厚生、服務規律等を役員に準じたものとされ、使用人に対する就業規則等は適用されず、労働基準法等の適用も制限されること。
 


損害賠償責任について、使用人は、労働法上、故意又は重過失の場合に限られているのに対し、取締役は、過失責任とされており、執行役員についても、役員と同様のレベルまでは求めないとしても、役員に準ずる責任を有していること。

 3、まとめ
 執行役員制度については、税務上の検討のみならず、労働法制及び会社法上の問題についても検討する必要があります。
 そのため、新たに「執行役員となる使用人」を会社としてどのような位置づけにしたいのかが明確である必要があり、そのうえで、法令に抵触しないような制度作りを検討する必要があるかと考えます。

(2011.12.05)

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