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死亡した被相続人に支払われた事前確定届出給与について

  今回は、会社の役員をしている者が死亡した場合に当該会社が事前確定届出給与の支給をした場合の取扱いについて、纏めたいと思います。

1、前提
  Aは、20年前に会社(「A社」という)を起業し、会社を運営してきました。A社は、毎年事前確定届出給与の届出を行い、Aに対して賞与を支払っていました。

  今回、Aが死亡しましたが、死亡退職金とは別に当初より届け出ていた金額の事前確定届出給与の支給を行いますが、相続税が課税されるのでしょうか。課税される場合に退職金として非課税の適用を受けることができますでしょうか。

  事実関係は以下の通りです。

@ 決算期:毎年3月末日

A 届 出:平成28年6月の定時株主総会で決議され、平成29年3月30日を支給日とする事前確定届出給与(200万円)の届出が期限内に提出されていた。

B Aの死亡日:平成29年2月10日

C A社は、届出どおりに平成29年3月30日に200万円の事前確定届出給与を支給した。

2、法人税の課税関係
  A社の課税関係をまず見ていきます。A社については、法人税法の要件を満たす事前確定届出給与を届出どおりにAに支給することから、法人税法上損金(費用)に算入することができます。
3、所得税の課税関係
  相続、遺贈又は贈与により取得するもの(相続税法の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)については、所得税を課さないこととされています(所法9条@十六)。

  また、死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等で、その死亡後に支給期の到来するもののうち相続税法の規定により相続税の課税価格計算の基礎に算入されるものについては、課税しないものとされています(所基通9-17)。

  この場合の支給期がいつかについては、契約又は慣習その他株主総会の決議等により支給日が定められている給与等については、その支給日を収入すべき時期とすることとされています(所基通36-9)。

  本件については、死亡後に支給日の到来する事前確定届出給与が支給されたことから、所得税は課税されないこととなります。そのため、A社は、給与の支給にあたり源泉所得税を徴収する必要はありません。
4、相続税の課税関係
  被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、当該給与の支給を受けた者について、当該給与を相続又は遺贈により取得したものとみなされます(相法3条)。

  なお、被相続人が受けるべきであった賞与の額が被相続人の死亡後確定したものは、相続税法3条1項二号に規定する退職手当等には該当しないで、本来の相続財産に属するものであるから留意すると規定されています(相基通3-32)。これは、通常の給与も同様ですが、賃金債権は遺族等が相続により承継的に取得するものであるとされ、その死亡した者の遺族等が受けるその賞与は、その退職が生前退職であるか死亡退職であるかにかかわらず、死亡した者に帰属する本来の相続財産を構成するものと考えられているためです。

  そのため、本件では、支給された賞与については、相続財産として相続税が課税されることとなります。なお、上記でみたように退職手当には該当しないことから、退職手当に係る非課税の適用を受けることはできません。

(2017.6.26)

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