業務内容事務所概要・経営者紹介会計税務情報アクセス関連サイト

会計税務情報

税務
コンサル
SPC
会計
相続税
代償分割と換価分割について

  相続財産の分割は、通常、相続財産そのものを相続人で分割する現物分割により行われます。
  相続財産が、預貯金や上場株式など分割しやすい財産のみであれば問題はありませんが、相続財産が主に居住用不動産一か所のみである場合や、事業用の財産を特定の相続人に継がせたい場合など、現実には相続財産を現物で分割することが難しい場合があります。
  この場合の代替方法として、「代償分割」と「換価分割」があります。
  以下に代償分割と換価分割について、簡単に説明します。

  ちなみに、分割できない不動産をとりあえず兄弟の共有名義で相続したり、不動産を分筆して相続する方法もありますが、将来時間が経てば経つほど問題が生じる可能性が高く、お勧めできる方法とはいえません。

(1)代償分割
  代償分割とは、共同相続人などのうちの1人又は数人が相続財産を現物で取得する代わりに、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して債務を負担する方法で、代償に充てる財産は、相続人の固有の財産でもよいとされています。

代償分割を行った場合の相続税上の課税価格は、代償財産を交付した人は、
「相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額 − 交付した代償財産の価額」により、

代償財産の交付を受けた人は、
「相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額 + 交付を受けた代償財産の価額」により評価されます。(相基通11-2-9)

  つまり原則として、時価により評価されますが、代償財産の対象となった相続財産の時価と相続税評価額の比例により評価することも可能です。(相基通11-2-10)
  通常は相続税評価額は時価より低く設定されていることが多いので、相続税評価額の割合により評価するほうが有利となります。

≪具体例 1≫

相続人:長男、次男
相続財産:土地 時価1億円、相続税評価額 8,000万円
長男が全部相続して次男に代償金5,000万円を支払う場合

長男の課税価格 8,000万円−5,000万円×8,000万円/1億円=4,000万円
次男の課税価格 5,000万円×8,000万円/1億円=4,000万円

  また、現金5,000万円を支払う代わりに、長男が所有している土地(時価5,000万円)を次男に渡した場合も、相続税については同様に評価しますが、この場合長男が次男に対し、土地を時価で譲渡したものとして譲渡所得税が課税されることになり(所基通33-1の5)、土地を受け取った次男はその時に時価で取得したものとなります。(所基通38-7(2))

  代償分割を予定している場合、代償財産を交付する相続人は代償に充てる資産が必要になります。個人資産がないため代償分割の方法を選択できないといった事態になることも考えられます。このため代償財産を交付する予定のある相続人は被相続人の生前から被相続人を被保険者とする生命保険契約を利用すること等により、代償資金を準備しておく必要があります。

(2)換価分割
  換価分割とは、共同相続人全員が未分割の財産を譲渡し、譲渡代金を相続人で分配する方法です。

  相続税上の課税価格は、譲渡代金ではなく財産評価基本通達により評価した額になるため、不動産等の評価額を換価代金の取得割合で各相続人に配分することになります。

  また、不動産の譲渡による譲渡所得が課税されますが、譲渡所得の計算上も、相続人の間で決められた取得割合によって、相続人全員がそれぞれ譲渡代金、取得費、譲渡費用を按分し計算します。また、相続財産の譲渡になりますので、それぞれが取得した不動産につき負担した相続税額についても取得費に含めることができます。(所法33、38、措法39、措令25の16、措規18の18)

(3)代償分割と換価分割の違い
  相続した不動産を譲渡する予定がある場合は、代償分割により特定の相続人が財産を取得し他の相続人に代償金を支払う場合と、共同相続人全員で譲渡し譲渡代金を分配する換価分割のいずれかの方法をとることができ、両者はその効果がとてもよく似ています。

  しかし、実際には不動産を売却すると譲渡所得が課税されるため、特例の適用ができる相続人とできない相続人とでは、課税負担額が大きく異なることになります。

≪具体例 2≫

相続人:長男、次男
相続財産:居住用不動産 時価1億円、相続税評価額 8,000万円
譲渡費用:500万円
土地にかかる相続税相当額:長男 100万円、次男 100万円

(注意)

@相続により取得した場合、被相続人の取得時の価額及び所有期間を引き継ぐこととされておりますが、今回の例においては、取得価額は不明とします。取得価額が不明の場合の取得価額は、税法上譲渡代金の5%とすることができます。(措法31の4)

A長男は被相続人と同居しており、居住用不動産を譲渡した場合の3000万円控除及び軽減税率の適用を受けることができるものとします。(措法31の3、35)

B平成24年現在において適用される以下の税率によるものとします。
・長期譲渡所得に対する税率(措法31)
  課税長期譲渡所得金額×20%(国税15%、地方税5%)
・マイホームに対する軽減税率(措法31の3)
  課税長期譲渡所得金額(3,000万円控除適用後の金額)に以下の税率を乗じて計算した金額
  A) 6,000万円以下の金額×14%(国税10%、地方税4%)
  B) 6,000万円を超える金額×20%(国税15%、地方税5%)

C相続税法の小規模宅地等の適用は受けないものとします。

●ケースA:長男が全部相続して次男に代償金5,000万円を支払い、相続した土地は長男が単独で譲渡した場合(代償分割)

長男の譲渡所得税額

[1億円−1億円×5%(取得価額)−100万円(相続税加算額)−500万円−3,000万円]×14%(マイホームの軽減税率)=826万円

●ケースB:次男が全部相続して長男に代償金5,000万円を支払い、相続した土地は次男が単独で譲渡した場合(代償分割)

次男の譲渡所得税額

[1億円−1億円×5%(取得価額)−100万円(相続税加算額)−500万円)]×20%(長期譲渡所得にかかる税率)=1780万円

●ケースC:長男と次男で共同して売却し、譲渡代金を1/2ずつ取得した場合(換価分割)

長男の譲渡所得税額

[1億円×1/2−1億円×1/2×5%(取得価額)−100万円(相続税加算額)−500万円×1/2−3,000万円]×14%(マイホームの軽減税率)=196万円

次男の譲渡所得税額

[1億円×1/2−1億円×1/2×5%(取得価額)−100万円(相続税加算額)−500万円×1/2]×20%(長期譲渡所得にかかる税率)=880万円

  上記のように、同額ずつ分割したつもりが分割の方法や特例の有無の違いによって結果として不公平感が生じる場合もあります。
  事前に財産をできるだけ正確に把握しどのように相続するか、早めの対策が大切です。

(2012.4.13)

⇒「居住用の土地評価」についてはこちら

この記事についてのお問い合わせ・お見積りはこちらへ

▲トップに戻る

Copyright Asuna Accounting. All rights reserved.  プライバシーポリシー