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グーグルの節税スキーム

  日本でもネット系企業のアジア進出が加速し、インドネシア、ベトナム、カンボジアなど各国への進出が目立っています。これらの国は、人件費が安い、勤勉で優秀、システムに強い人材が豊富、親日的、ネット系は外資進出への規制が緩い、駐在員にとり比較的暮らしやすい、といった利点があります。
  また、進出先が2カ国、3カ国と増えるにつれて、シンガポールを活用した節税スキームや、グーグルなど米国の大手IT企業が使っている節税スキームが再び注目されています。
  そこで今回は、Googleの節税スキームをご紹介したいと思います。

  なお、結論から申しますと、米国企業が採用する節税スキームを日本の企業がそのまま採用すると、タックスヘイブン税制の適用を受けるため、米国企業と同じメリットを享受することはできません。

Googleの節税スキーム

  ‘@A海外事業に関するライセンスをGoogle Inc.(以下、「Inc.」)から、Google Ireland Holdings(以下、「Holdings」)に付与する。
  付与すれば対価としてロイヤルティが発生しますが、Holdingsはグーグルのシステム開発のコストを負担しますので、相殺する形になります。
  なお、この取引金額については、歳入庁との間で事前価格合意を行っています。

  アイルランドの法人税率は12.5%と低率ですがHoldingsが所得を稼得すると、アメリカのサブパートF条項(日本のタックスヘイブン税制に相当)により、アメリカで合算課税されてしまいます。
  そのため、このHoldingsの管理地を無税国である英国領バミューダに置きます。
  アイルランドの税法上、法人税の納税義務は企業の税務上の居住地により決まり、アイルランドの居住企業と見なされるのは、アイルランドに、中枢を担う経営・管理が置かれている場合です。従って、管理機能をバミューダに置くことで、アイルランドでは課税対象外となります。

  またこのことから派生して、中枢機能がバミューダにあるとする以上、Holdingsが実際に人を雇い入れ、ポータルサイトサービスを提供することはできません。
  そのため、実際の業務を行い、物理的なオフィスを有する子会社(Inc.の孫会社)であるGoogle Ireland Ltd.(以下、「Ltd.」)を設立します。

‘BCHoldingsからLtd.へサブライセンスを行い、Ltd.がアメリカを除く世界中のユーザーへサービスを提供します。

  Ltd.からHoldingsへライセンス料を払いますが、直接払ってしまうと、アイルランドはロイヤルティに対して20%の源泉税が発生しますので、多額の税負担が発生してしまいます。
  そこで、オランダにペーパーカンパニーであるGoogle Netherlands Holdings BV(以下、「Netherlands」)を設立し、Netherlands経由でLtd.からHoldingsにライセンス料を支払います。
  アイルランドとオランダの租税条約により、ロイヤルティの支払いに対しては源泉税がかかりません。そしてオランダでは、税法上ロイヤルティの支払いに対しては源泉税がかからないため、結果として無税でHoldingsに利益を移すことができます。

  こうして世界中の利益がHoldingに集められ、その額は、グーグルが稼得する利益の80%、20億ドルとも言われています。
  しかし、Holdingsは現在、会社形態を無限責任会社に変更し、アイルランドでの決算書の開示義務がなくなったため、正確な金額を把握することはできません。

  なお、こうした動きには世界各国の政府から批判が出るとともに、アメリカでも何度も議題として取り上げられています。
  具体的には、アメリカにはチェックザボックスと言う、海外の事業体を法人と見るか、パススルーが適用できる事業体と見るかを選択できますが、海外の孫会社も、法人か事業体かを選択することができます。
  つまり、仮にLtd.を法人として選択すると(アイルランドの法律上は法人です)、Ltd.はアメリカの合算課税の対象になることになります。しかし、事業体を選択することで、Ltd.とHoldingsは一体と看做され、結果、世界中のユーザーから稼得した所得はHoldingsの所得となり、バミューダの無税の恩恵を受けることになります。
  この制度を廃止する法案が幾度も検討されましたが、そのたびに猛烈なロビー活動にあい、実現化していない状況です。

あすな会計事務所では、中小企業のアジア進出サポートを行っています。
http://www.asuna-asia.com
http://www.asuna-cn.com

(2013.4.5)

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