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学校法人の寄付金の取扱いについて

  今回は、学校法人会計の実務において重要な論点である収益事業会計から学校法人会計への寄付金の取扱いについて纏めたいと思います。
1.収益事業会計から学校法人会計への寄付金
  学校法人などの公益法人の収益事業は、本来的には主な目的たる公益事業活動(学校法人の場合、教育研究活動)を財務的に支援することを目的としています。したがって、収益事業で得た利益の額を、寄付金として学校法人会計に繰り入れるのが一般的な方法です。これが学校法人会計における「収益事業収入」に該当します。この寄付金については、法人税法上、いわゆるみなし寄付金として取扱いが定められています。(法人税法第37条第5項)。
2.収益事業における寄付金の税務上の取扱い
  法人税法上の寄付金とは、相手方からの反対給付を期待しないで行われる金銭その他の資産の経済的利益の供与であり、無制限の損金処理は認められておらず、支出する法人の類型や寄付金の内容によって一定の損金算入限度額が定められています。寄付金は実際にその支払が行われたときに損金算入されることになりますので、未払金として処理してもその事業年度の損金とは認められません(法人税法施行令第78条第1項)。

  反対に仮払経理した寄付金は、その支払った事業年度において支出したものとして寄付金の損金算入限度額計算の規定を適用することとなります(法人税基本通達9-4-2の3)。外部に対する寄付金とされるためには、実際の支払がいつであるかが重要な点となります。

  みなし寄付金の規定の適用については、収益事業に属する資産から収益事業以外の事業へ支出し、又は区分経理をすれば、その区分経理等をもって寄付金の支出がされたものとみなして、みなし寄付金の規定が適用されます。

  公益法人等が税務上損金算入できる限度額は以下のように規定されています(法人税法施行令第73条第1項第3号、第73条の2)。

(1)公益社団法人又は公益財団法人

当該事業年度の所得の金額の100分の50に相当する金額

(2)私立学校法第3条に規定する学校法人(私立学校法第64条第4項の規定により設立された法人で専修学校を設置しているものを含む)

当該事業年度の所得の金額の100分の50に相当する金額(当該金額が年200万円に満たない場合には、年200万円)

  したがって学校法人の場合は、みなし寄付金を含めた寄付金を控除する前の当該事業年度の一定の所得の50%(その金額が200万円未満の場合は200万円)を損金に算入できることになります。つまり、寄付金として区分経理等をしている限り、最低200万円の所得までは非課税となり、最大でも所得の50%だけが課税対象となるということになります。

3.寄付金の会計処理方法
  収益事業を運営するために必要な資金を学校法人会計から元入れした場合は、これを元入金として会計処理することになります。逆に収益事業会計から学校法人会計に支出した金額については、税務上、寄付金として損金算入限度額の範囲内で損金計上できますので、収益事業会計において「寄付金」の科目で処理することになります。なお、学校法人会計の処理については、税務上元入金の返還で問題ありません。

  ただし、収益事業から学校法人会計に寄付金を支出したとしても、逆に学校法人会計から収益事業会計へその寄付金に見合う額を元入金として経理するなど、実質的に収益事業から学校法人会計へ金銭等の支出がないと認められるときは、税務上寄付金とはされません(法人税基本通達15-2-4)。すなわち、収益事業から学校法人会計に寄付金を支出し、その寄付金により取得した固定資産を専ら収益事業で使用するような場合は、この支出を寄付金として税務上取扱うことはできませんので、確定申告において加算調整する必要があります。


(2020.12.01)


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