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特定目的会社の一口当たり情報

  特定目的会社(以下、TMK)の一口当たり情報も、一般事業会社と同様に、「1株当たり当期純利益に関する会計基準(以下、基準)」に従って算出されますが、TMKは、配当額が予め定められた累積型の優先株式(優先出資)があったり、当期純損失や債務超過になっているケースも少なくありません。
  般事業会社で一株情報を算出するのは主に上場企業だけですが、上場企業では当期純損失や債務超過になっているケースは稀なため、実務上これらがどのように扱われるのか、迷うケースもあります。
  今回は、TMKの一口情報のうち、判断に迷う特殊なケースを想定して、個別に具体的な算出方法をご説明したいと思います。
@一口当たり当期純利益

1.一口当たり配当額が予め決まっている優先出資で、かつ今期が赤字の場合

  • 累積型の場合
    剰余金の有無、法律上の配当決議の有無にかかわらず、社債利息と同様に、今期の要支払額(今期の会計期間に対応する配当すべき金額)をもって一口当たり当期純利益を算出します(基準46)。
    これは、たとえ今期赤字であっても(かつ剰余金がなくても)、翌期に利益(剰余金)が出て配当される可能性があることによります。
  • 非累積型の場合
    今期に配当決議が行われなければ、今後、今期分について配当されることはないため、今期が赤字であれば、「―」となります。
    但し、今期赤字でも、過去からの剰余金があり、決算後に優先配当決議がなされるのであれば、当該配当額に従って算出されます。この場合は、社員総会の配当決議が必要となります(基準16、45)

2.特定出資で、今期が赤字の場合

  当期純損失から優先出資への配当額を控除して算出します(基準16、46)。
  特定出資は、当期純損失の場合でも、当期純利益と同様にマイナス表示で算出します(基準12)。

A一口当たり純資産額

1.特定出資で、剰余金がある場合

  優先出資の払込金額と、当該会計期間に係る優先出資への配当額を控除して算出します(1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針(以下、適用指針)35)。
  そして、ここで控除すべきとされる金額には、剰余金に対する優先出資の持分は含まれません。
  本来、特定出資の一口当たり純資産の算定に当たり、剰余金のうち、優先出資に対応する剰余金は控除すべきですが、その算出は困難なため、簡便的に控除は不要とされています(適用指針60)。従って、純資産から控除すべき優先出資に係る金額は、優先出資の配当額及び払込額のみとされ、B/Sの剰余金は全額特定出資に関わるものとして算出することになります。

2.特定出資で、欠損・債務超過の場合

  このケースは少し複雑です。
  上記で、特定出資の純資産から控除すべき金額には、優先出資に係る剰余金は含まれないと述べましたが、その根拠は、優先出資に係る剰余金を算定するのは困難なことによります(適用指針60)。逆に言うと、算定が可能な場合には、剰余金の一部を特定出資の純資産から控除し、当該剰余金は優先出資の一口当たり純資産額に含めるべきことになります。
  欠損・債務超過の場合、マイナスの剰余金のうち、少なくとも優先出資金額に係る欠損が優先出資に対応することは明らかです。そのため、優先出資金額を特定出資の純資産から控除するとともに、同額の欠損(マイナスの剰余金)を純資産から控除します(加算します)。その結果、特定出資に係る純資産額は、B/Sの純資産額がそのまま特定出資に係る純資産額となります。

  • 特定出資の純資産から控除すべき優先出資への配当額については(適用指針35(4))、対象となるのは、期末日までに法律上決議された配当金額(中間配当)及び今期に係る社員総会で決議される金額のみとなります。
    仮に累積型の優先出資で、契約上の過去の未払額があっても、それらは、実際に社員総会等で配当決議された時に純資産額の算出にあたり加味することになります(適用指針60)。
  • 債務超過の場合
    債務超過の場合においても、特定出資については、参考情報としてマイナスで算出し、開示します(1株当たり当期純利益に関する実務上の取り扱い(以下、Q&A)Q6)。

3. 残余財産の分配額が定額で決まっている優先出資で、債務超過の場合

(債務超過なので「−」とするか、債務超過の有無にかかわらず、優先分配額に基づいて定額で算出するか?)

  上述の通り、実務指針60は、本来剰余金も優先出資に振るべきだが、算定が困難なので振らなくてよい旨規定されており、逆に言うと、算定が可能なら振るべきと考えられます。
  そして債務超過の場合、少なくとも優先出資の払込額に相当するだけの欠損金は、優先出資に関わるものであることは明らかなので、優先出資に係る純資産額は、「払込金額−同額の欠損金」となり、「−」となります。
  債務超過であり、流動化計画上も、優先出資への配当が行われない事、及び優先出資に係る残余財産の分配が行われない状況であるため、実態にも即していると考えられます。

  • 債務超過の場合
    上述の通り、優先出資額を超える(マイナスの)剰余金のうち、いくらが優先出資に係る剰余金であるかを算出することは困難であるため、優先出資に係る純資産がマイナスで算出されることはありません。Q&Aの文言上も、特定出資のみが、求められているため、優先出資については「−」となります。


(2013.2.1)

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