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現物出資

  現物出資とは、会社へ出資を行うにあたり、その給付財産を金銭以外の物、すなわち金銭債権、動産、不動産、有価証券及び知的財産権等を拠出することにより、当該法人の株式を取得することをいいます。
  今回は、法人が現物出資により資産を移転した場合の、税務上の取り扱いをまとめてみたいと思います。
1、法人税法上の取り扱い
  現物出資が行われた場合、法人税法上は、法人税法に規定する適格要件を満たした場合には、各資産を簿価により譲渡したものとされ、それ以外(非適格)の場合には現物出資時の時価により譲渡したものとして、処理を行うこととされています。(法人税法第62条の4)
2、消費税法上の取り扱い
  消費税法でも同様に、現物出資による資産の譲渡は課税対象とされているため、建物等の課税対象物を現物出資した場合には課税取引に、土地等の非課税対象物を現物出資した場合には非課税取引に該当します。(消費税法施行令第2条第2項)

  但し、この場合の課税標準は「当該出資により取得する株式(出資を含む)の取得の時における価額(時価)に相当する金額(消費税法施行令第45条第2項B)と規定されているため、たとえ法人税法上、適格現物出資に該当し、簿価により資産を譲渡したとされた場合であっても、消費税の計算においては、時価を課税標準として計算し直す必要があります。

  また、会計帳簿上、消費税相当額を別途認識する必要がありますが、場合によっては、その課税標準は帳簿上の簿価税抜価格とは一致しないこととなるため、消費税の申告書作成にあたっては、十分留意する必要があります。

  具体的な税務上の仕訳については、下記のようになると考えます。

【前提】

A社からB社へ土地建物を現物出資
現物出資直前簿価:100
現物出資直前時価:80(建物時価30)

@非適格現物出資の場合

@、現物出資法人

B社株式 81.5 土地建物譲渡収入 80 ※2
  仮受消費税等 1.5 ※1
土地建物譲渡原価 100 ※2 土地建物 100

※1 消費税課税標準:80×30/80=30
消費税額:30×5%=1.5

※2 収入と原価の差額20につき、譲渡損が計上されることとなります。

A、被現物出資法人
土地建物 80 資本金等 81.5
仮払消費税等 1.5
A適格現物出資の場合

@、現物出資法人

B社株式 101.5 土地建物譲渡収入 100 ※3
  仮受消費税等 1.5 ※1
土地建物譲渡原価 100 ※3 土地建物 100

※3 簿価で譲渡したものとされるため、譲渡損益は発生しません。

A、被現物出資法人
土地建物 100 資本金等 101.5
仮払消費税等 1.5

注)但し、この消費税の処理については、基準等が明確に示されているわけではなく、経理方式(税抜・税込)の違いによる論点についてまとめたPwCのニュースレター等も参考になるかと考えますので、こういった論点も含め、実務処理にあたっては、顧問税理士と十分協議・検討頂く必要があるかと考えます。

3、流通税について
  不動産を現物出資した場合には、原則的には、通常の不動産売買同様、不動産取得税及び、移転登記に係る登録免許税がかかってきます。
  但し、法人が新設法人を設立するにあたって行う不動産の現物出資で、新たに設立される法人の設立時において、下記@〜Bの全ての要件を満たした場合に限っては、不動産取得税が非課税とされています。(地方税法73条の7二の二、同法施行令37条の14の2)

@現物出資法人が、被現物出資法人の発行済株式の総数の90%以上の株式を所有していること。

A被現物出資法人が現物出資法人の事業の一部の譲渡を受け、その譲渡に係る事業を継続して行うことを目的としていること。

B被現物出資法人の取締役の一人以上が現物出資法人の取締役又は監査役であること。

4、法人税法上の適格要件 (法人税法第2条12の14、同法施行令4の3H〜K・21
  法人税法上適格現物出資とは、下記のそれぞれの場合に従い、各要件を満たし、かつ、現物出資法人に被現物出資法人の株式のみが交付されるものをいいます。

(1)完全支配関係がある場合…下記@Aのいずれかの要件を満たすもの

@当事者間にいずれか一方の法人による直接又は間接の完全支配関係があり、かつ、現物出資後もその完全支配関係が継続すると見込まれるもの(100%親子会社関係)。

A当事者間に、同一の者(個人の場合には特殊関係者を含む)によってそれぞれ直接又は間接の完全支配関係があり、かつ、現物出資後もその完全支配関係が継続すると見込まれるもの(100%兄弟会社関係)。

(2)50%以上100%未満の支配関係がある場合…下記@〜Cの全ての要件を満たすもの

@被現物出資法人に、その現物出資事業に係る主要な資産及び負債が移転していること。

A被現物出資法人に、その現物出資事業に係る80%以上の数の従業員が移転し、継続してその現物出資事業に従事することが見込まれていること。

B被現物出資法人において、その現物出資事業が引き続き営まれることが見込まれていること。

C現物出資後も支配関係が継続すると見込まれていること。

(3)(1)(2)の支配関係が無い場合…下記@〜Eの全ての要件を満たすもの

@移転する現物出資事業が、相互に関連するものであること。

A移転する現物出資事業のそれぞれの売上金額、従業者の数、その他これらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと又は、当該現物出資前の各法人の役員等が、現物出資後に現物出資法人の特定役員となることが見込まれていること。

B被現物出資法人に、その現物出資事業に係る主要な資産及び負債が移転していること。

C被現物出資法人に、その現物出資事業に係る80%以上の数の従業員が移転し、継続してその現物出資事業に従事することが見込まれていること。

D被現物出資法人において、その現物出資事業が引き続き営まれることが見込まれていること。

E現物出資法人が、その取得した被現物出資法人の全部の株式を継続して保有することが見込まれていること。

なお、下記@〜Bに掲げる場合には、上記の要件に関わらず、非適格現物出資となります。

@、外国法人に対し現物出資を行う場合に、国内にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債の移転を行うもの。

A、外国法人が内国法人に国外にある資産又は負債として政令で定める資産又は負債の移転を行うもの。

B、新株予約権付社債に付された新株予約権の行使に伴う当該新株予約権付社債についての社債の給付。

5、最後に
  何かと見落としがちな組織再編時の消費税処理ですが、建物等の現物出資を行う場合には金額も大きくなることが予想されますので、再編後の資金計画等に漏れがないよう、十分注意する必要があるかと考えます。

(2012.11.12)



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