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自社への貸付金を債務免除した場合の取扱いについて

  今回は、創業者が自分の会社に貸し付けている貸付金を返済できる見込みがないため、債務免除した場合の取扱いについて、纏めたいと思います。
1、前提
 Aは、30年前に会社(「A社」という)を起業し、会社を運営してきましたが、年齢も高齢になってきたこともあり、また、自分が死亡した場合の相続税の負担が生じないように、会社に対する貸付金を債務免除しようと思っています。
(1)  会社の業況は以下の通りです。 
  資産状況:5千万円の債務超過(相続税評価ベース)
  税務上の繰越欠損金:6千万円(税務上の要件は満たしている)
  Aからの借入金:4千万円
  業況:ここ10年ほど業績が思わしくなく、自分が死亡した場合には廃業するしかないと考えている
  株主の状況:A80%、Aの子供B20%の2名のみ
  その他:会社名義でAを被保険者とする生命保険契約(保険金額3千万円)がある
(2)  Aの財産状況は、以下の通り(金額は相続税評価額)です。 
  現預金:1千万円
  自宅不動産:7千万円
  A社株式:0円
  A社に対する貸付金:4千万円
  債務:無し

  Aは、自身が死亡した場合に、返済できる見込みがないにも拘わらず、A社に対する貸付金が相続税の計算上、財産となってしまうことを危惧して、債務免除を計画しています。自分が死亡した際には、3千万円の保険金が支払われることから、会社の現時点の債務や清算費用を加味して、3千万円を債務免除することとしましたが、その場合の税金はどのようになりますでしょうか。
2、法人税の課税関係
  A社の課税関係をまず見ていきます。A社については、Aに対する債務が3千万円消滅することになりますので、債務免除益が計上されることになります。
  当該金額は、法人税の計算上、収益(益金)となりますので、法人税の課税の対象となります。ただし、A社は、繰越欠損金を6千万円有しておりますので、繰越欠損金が期限内であること等の一定の要件を満たしている場合には、これと相殺することができます。
  そのため、本件については、債務免除によってA社に法人税の課税が生じることはないことになります。
3、相続税の課税関係
  相続税は、相続又は遺贈により財産を取得した個人に課税されるものですので、今回のケースについては、課税関係は生じません。
4、贈与税の課税関係
  贈与税は、個人から個人に贈与した場合の税金であり、今回のように法人に対して債務免除した場合には関係ないと思われるかもしれませんが、A以外の株主に対して贈与税が課税される場合があります。
  同族会社の株式の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主が当該株式の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとされています。また、この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時によるものとされています(相基通9-2)。
(1) 会社に対し無償で財産の提供があった場合:当該財産を提供した者
(2) 時価より著しく低い価額で現物出資があった場合:当該現物出資をした者
(3) 対価を受けないで会社の債務の免除、引受又は弁済があった場合:当該債務の免除、引受又は弁済をした者
(4) 会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合:当該財産の譲渡をした者

  したがって、今回の債務免除によって、A社の株価が増加する場合には、その増加した金額のうちBの持分に対応する金額についてAからBに贈与があったものとして贈与税の課税対象となります。
  本件については、債務免除前のA社の株価は、債務超過の状態であるため0円となります。一方で債務免除後のA社の資産状況ですが、3千万円を債務免除しても、なお引き続き債務超過状態は解消されておりませんので、債務超過後の株価も0円となります。
  そのため、今回の債務免除により株式の価額は増加しておりませんので、Bに対して贈与税が課税されることはないと考えます。

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(2016.12.7)

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