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連結納税
  前回は、連結納税開始に伴う子法人の資産の時価評価についてまとめましたが、今回は、連結納税開始に伴う子法人の繰越欠損金の引継ぎについて、まとめてみたいと思います。
(1) 概要

  連結親法人の各連結事業年度開始の日前9年以内に開始した連結事業年度において生じた連結欠損金額については、各連結事業年度の連結所得から控除することができる(一定の限度超過額を除く)こと等、基本的な取扱いは、単体納税における繰越欠損金と同様です(法法81の9@)。

  詳細は下記(2)で記載しますが、資産の時価評価の対象外となる子法人(以下、「特定連結子法人」という)及び連結親法人同等法人の単体納税時の繰越欠損金は、連結納税開始後も繰り越されて、連結欠損金とみなされることになります。一方、その他の子法人の単体納税時の繰越欠損金は、連結納税開始に伴い、切り捨てられることになります(法法81の9A、B)。

  その他の子法人の繰越欠損金が切り捨てられるのは、単体納税から連結納税へ納税単位が変更することに伴い単体納税時に生じた欠損金を清算(切捨て)する必要があると考えられていることや、多額の繰越欠損金を保有する会社を利用した租税回避を防止すること等の理由によるものです。

  なお、連結親法人の単体納税時の繰越欠損金については、連結納税開始後も繰り越され、連結欠損金とみなして連結グループ全体の連結所得から控除することができます(法法81の9A)。

(2) 連結子法人の繰越欠損金

  上記(1)で記載したとおり、特定連結子法人及び連結親法人同等法人の単体納税時の繰越欠損金については、連結納税開始後も連結欠損金とみなされるのに対し、その他の子法人の単体納税時の繰越欠損金は、連結納税開始時に切り捨てられることになります。

  各連結子法人の区分ごとの取扱いは、以下のとおりです。

@特定連結子法人

  特定連結子法人の繰越欠損金は、連結欠損金のうち「特定連結欠損金」とみなされ、当該特定連結子法人の個別所得金額を上限として、利用することができます(法法81の9@)。

  平成22年度税制改正前は、原則として、子法人の繰越欠損金は、連結納税開始に伴い全額切り捨てられていたため、連結納税導入の足枷になっていました。

  しかしながら、特定連結子法人は、連結親法人と一定期間の完全支配関係があるため、特定連結子法人の単体納税時の繰越欠損金は、グループ内で生じた繰越欠損金と同等と考えられるので、平成22年度税制改正により、特定連結子法人の単体納税時の繰越欠損金を、連結納税開始後も連結欠損金とみなして、当該連結子法人の個別所得金額の範囲内で、控除することが可能になりました。この連結欠損金を「特定連結欠損金」といいます。

A連結親法人同等法人

  連結親法人同等法人とは、連結親法人となる法人を設立した株式移転に係る完全子法人で、その株式移転の直前に他の法人によって支配されておらず、また、株式移転日から開始日まで継続して連結親法人による完全支配関係のある連結子法人をいいます。

  連結親法人同等法人の単体納税時の繰越欠損金は、「特定連結欠損金でない連結欠損金」とみなされ、連結グループ全体の連結所得から控除することができます(=連結親法人のみなし連結欠損金と同じ取扱い)(法81の9B)。

  ただし、当該株式移転が非適格株式移転である場合には、当該株式移転の日の属する事業年度前の事業年度に生じた繰越欠損金は、通常の「特定連結欠損金」に該当し、当該連結子法人の個別所得金額の範囲内でのみ控除することができます(法法81の9B一イ)。

Bその他の連結子法人(=時価評価対象子法人)

  上記の@、Aに該当しない子法人の単体納税時の繰越欠損金は、連結納税開始時に全て切り捨てられることになります。

(3) 地方税の取扱い

  連結納税は、法人税のみで適用される制度であるため、地方税では、連結納税は適用されずに単体納税が継続されます。
  そのため、連結法人税の計算上、切捨て等された繰越欠損金を、地方税で利用するために、地方税の計算過程において一定の調整をする必要があります。

  地方税の取扱いについては、別の機会でまとめさせていただきます。

(4) まとめ

  連結納税導入後も単体納税時の繰越欠損金が使えるかどうかは、将来のタックスプランニングに大きく影響するため、連結納税を導入する場合には、今後の損益通算等によるメリットと切捨てによるデメリットのいずれが大きいかを慎重に判断する必要があると考えます。


(2013.11.14)

⇒地方税の欠損金についてはこちら

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