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現物出資(消費税)

  法人へ出資を行う方法として、金銭出資と現物出資があります。
  今回は、この現物出資を行った場合の消費税の取扱いについて、まとめてみたいと思います。
1、現物出資
  現物出資とは、金銭以外の財産をもって出資に充てることをいいます。
  基本的に現物出資財産は、@譲渡可能であること、A貸借対照表に資産として計上できることの2つの要件を満たしていれば、現物出資財産として拠出することができると解されています。(但し、例外として、現在賃貸中である事務所について支払っている敷金のように、貸借対照表には計上されているものの、まだ返還請求権が発生していない状態のものについては登記申請を受理してもらえないため、現物出資はできないとされています。)
  また、資産と同時に負債(例えば、現物出資資産に付随する借入金など)も、現物出資資産の価額を限度として現物出資することができるとされていますので、個人事業を法人成りする場合などに事業用資産・負債をまとめて法人に移転することが可能となります。
2、消費税の取扱い

@原則

  消費税は、事業者が国内において、事業として対価を得て行われる資産の譲渡等を課税対象としています。
  なお、個人事業者が事業で使用するための資金を調達するために、生活の用に供している資産を譲渡しても、これは「事業として」行われたものには該当せず、消費税の課税対象にはなりません。反対に、個人の相続税の納税資金をまかなうために事業用資産を譲渡した場合には、消費税の課税対象に該当し消費税が課されることになります。(消費税法基本通達5−1−1、5−1−7、5−1−8)

A現物出資

  消費税法上、現物出資については、消費税法施行令第2条2項に「金銭以外の資産の出資」について資産の譲渡等に類する行為に該当すると定められており、この場合の課税標準額は、「その出資により取得する株式の取得の時における価額に相当する金額」(同法令45条2項3、同法基本通達11−4−1)となります。
  これは、資産を譲渡した対価として金銭ではなく株式等を取得することから、その取得した株式等の時価が課税標準となることを規定しています。

  従って、事業者がその保有する事業用の資産等を現物出資により拠出した場合には、その取得した株式の価額のうち、課税対象取引に対応する部分について消費税が課されることになります。

  例えば、土地と建物を同時に現物出資財産として拠出した場合の課税標準額は、下記のように計算されます。

【例1】
T現物出資財産
  @土地:1,000(時価1,500)
  A建物:800(時価500)

U取得した株式の時価:2,000

消費税の課税標準額=U×A/(@+A)
=2,000×500/(1,500+500)
=500

この場合の消費税額(5%により計算)については、税込経理を採用していた場合には23(=500/1.05×5%)、税抜経理を採用していた場合には25(=500×5%)となりますので、ご注意ください。

  また、同時に負債も引き継がせた場合には、下記のようになります。

【例2】
T現物出資財産
  @土地:1,000(時価1,500)
  A建物:800(時価500)
  B借入金:△1,600

U取得した株式の時価:400

消費税の課税標準額=U×A/(@+A)
=400×500/(1,500+500)
=100

  なお、【例2】のような場合で借入金が2,000あるとすると、拠出する財産の差額は0となりますが、差額が0となるからといって、これを現物出資とせず、まとめて法人へ譲渡した場合には、単純に土地建物を譲渡したことになりますので、建物部分500が課税標準額となり、この部分に消費税の納税義務が生じてきます。(現物出資とした場合には、おそらく株式の時価は1となるかと考えますので、上記の算式に当てはめ、課税標準額は0となると考えます。)



(2013.12.9)

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