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「旅行業者」

  今回と次回にわたって、旅行業者の消費税の取り扱いについてまとめていきたいと思います。今回は、国内旅行関係、次回は海外旅行関係についてまとめます。
T.手配旅行と企画旅行
  旅行業者が行う旅行業務には、旅行業法の規定により、大きく@手配旅行とA企画旅行の2つがあります。国内・海外を問わず、どちらに該当するかで処理が大きく変わることになりますので、まずはこの2つの違いから説明したいと思います。

@手配旅行とは、旅行業者が旅行者等の依頼を受けて、航空券や鉄道、ホテル等をそれぞれ手配・取次をして対価を得る行為です。

A企画旅行とは、旅行者等から包括的に旅行の請負を受け、旅行業者が航空券・鉄道やホテル、観光等を組み合わせ、企画し、旅行者に提供して、対価を得る行為です。予めパンフレットに掲載されているパック旅行などは募集型企画旅行といい、旅行者の希望に応じて旅行業者が企画するものを受注型企画旅行といいます。

(1)売上の認識方法の違い

@手配旅行
  手配旅行における役務の提供は、運送・宿泊機関等の代わりに旅行者にチケット等を売ってあげること(代売サービス)と旅行者等の代わりに運送・宿泊機関等を手配してあげること(手配サービス)で、これらの役務の提供に係る対価が課税標準になります。
  例えば、当社が10,500円で購入した新幹線のチケットを旅行者に、実費に手配手数料2,100円を上乗せした12,600円で販売した場合は、実費10,500円は通過勘定で処理をし、手配手数料2,100円を課税売上げとして認識することになります。

A企画旅行
  一方、企画旅行における役務の提供は、旅行業者と旅行者との間の包括的な旅行の請負のため、原則として旅行代金の総額が役務の提供の対価となり、課税標準となります。
  例えば、当社がパンフレットに総額52,500円として掲載されている国内パック旅行を旅行者に販売し、実費新幹線のチケット代21,000円・ホテルの宿泊料金10,500円をそれぞれの業者に払った場合は、それぞれ旅行代金の52,500円を課税売上げとして、新幹線のチケット代21,000円とホテルの宿泊料金10,500円は課税仕入れとして認識をすることになります。

(2)企画旅行の例外的処理

@他社が主催するパック旅行を仕入れて販売する場合
  この場合には、旅行業法上の代売契約として取り扱われるため、旅行者に販売した売却価額から主催した他の旅行業者に支払う対価を引いた差額部分が代売手数料として課税売上げになります。
  例えば、他の旅行業者からその旅行業者が主催した国内パック旅行を105万円で仕入れて、旅行者に126万円で販売した場合は、差額の21万円を課税売上げとして認識します。なお、消費税法基本通達により、会計処理上以下のように処理していても、差額部分を課税売上げとして処理して差支えないこととされています。

仕入 ○○円 /現金預金 ○○円
現金預金 ○○円 /売上 ○○円

Aパック旅行と称するものであっても、実質は手配旅行と認められるもの
  この場合には、継続して、運賃及び宿泊費等を通過勘定で処理し、差額部分を課税売上げとして計上している場合には、差額部分を課税売上げとして認識しても差し支えないとされています。つまり、総額を計上するか、差額部分を計上するかは納税者の選択に委ねられています。(3)において記載している事項に留意したうえで、選択して頂く必要があります。

(3) 総額計上と純額計上
  ここまで、手配旅行と企画旅行について長々と説明させて頂きましたが、総額で計上しても純額で計上しても最終的な利益は変わらないのだから、税額に影響ないのでは?と疑問をお持ちの方もいるのではないかと思います。確かに、法人税は利益に対して課税されますので、総額で処理しても、純額で処理しても、算出される税額に影響はありません。しかし、消費税法上は、総額で処理するか・純額処理するかは、以下の点に大きく影響します。

@免税事業者となるかどうかの判定
  基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者は消費税の納税を免除されます。
  ※平成25年1月1日以降に開始する年又は事業年度については、特定期間の課税売上高及び給与等支払額が判定に影響します。

A簡易課税制度を適用できるかどうかの判定
  基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、かつ一定の期限までに簡易課税制度選択届出書を提出している等の要件を満たしている事業者は簡易課税を選択することが出来ます。

  例えば、本来、手配旅行又は実質的に手配旅行である企画旅行等にもかかわらず、総額処理を行う、若しくは、企画旅行であるにも関わらず、純額処理を行うことにより、上記@Aの判定結果が変わってしまうことが考えられます。

  従って、その旅行業務がどの形態に該当するかに留意した上で、慎重に会計処理等を行う必要があります。

U.国内旅行を外国法人に対して販売した場合
  旅行業者が、外国人旅行者用に日本国内に支店又は出張所を持たない外国法人(非居住者)に、その旅行会社が企画した国内パック旅行を販売した場合の消費税の取り扱いについての国税不服審判所の裁決事例があります(平成23年6月14日裁決(裁決事例集No.83))。この裁決によると、当該国内パック旅行における日本国内での飲食、宿泊、輸送等の一定の役務の提供に係る売上げは、その外国人旅行者が国内において直接便益を享受する取引に当たる場合は、輸出免税取引には該当しない、とあります。
  消費税法基本通達7-2-16において、輸出免税取引から除かれる非居住者に対する役務の提供の例として、以下のように掲げています。

(1) 国内に所在する資産に係る運送や保管
(2) 国内に所在する不動産の管理や修理
(3) 建物の建築請負
(4) 電車、バス、タクシー等による旅客の輸送
(5) 国内における飲食又は宿泊
(6) 理容又は美容
(7) 医療又は療養
(8) 劇場、映画館等の興業場における観劇等の役務の提供
(9) 国内間の電話、郵便又は信書便
(10) 日本語学校等における語学教育等に係る役務の提供

  つまり、非居住者に販売した外国人旅行者用の国内パック旅行のうち、これらに該当する役務を提供している場合には、その部分については、課税売上げとして処理する必要があるとの見解が示されたのです。

V.その他国内旅行関係の消費税の注意項目

(1)神社仏閣に対する料金の取り扱い
  宗教法人に対して支払う料金であっても、それが消費税法上課税資産の譲渡等に該当すれば、消費税は課税されます。例えば、拝観料は不課税ですが、神社や仏閣の中にある資料館や宝物館における入館料は課税仕入れとなります。

(2)旅館の従業員等への心付け・チップの取り扱い
  運転手や女中等に対する心付け・チップは法人税法上交際費に該当しますが、消費税法上は、役務の提供の対価とは別に支出するもので、明白な対価関係は認められないため、不課税仕入れとなります。


(2012.1.15)

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