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海外転勤中に自宅を譲渡した場合の居住用財産の特例について

  個人が居住の用に供している家屋の譲渡(家屋とともにする土地等の譲渡を含み、以下、家屋及び土地を総称して「家屋等」という。)をした場合には、所得税における譲渡所得の計算上、様々な特典が受けられます。海外転勤中に転勤前に居住していた家屋等を譲渡した場合にも居住用財産の特典が受けられるかについて纏めたいと思います。
1、前提
  甲は、平成18年3月15日に5年間の予定で海外転勤となり、家族とともに中国に赴任しました。
  赴任の時まで居住の用に供していた家屋等については、家財等をそのままとし、近隣に住んでいる甲の両親に維持管理を任せていました。
  5年間の予定でありましたが、日本に帰国することなくそのまま中国勤務が継続することとなったことから、日本に所在する家屋等を平成25年7月に譲渡しました。
  この場合に、居住用財産の譲渡所得に係る特例を受けることができるでしょうか。
2、居住用財産の各種特例について
  居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例制度の主なものとして、以下のような制度があります。

(1)居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(譲渡所得に対して軽減税率が適用できる特例)

(2)居住用財産の譲渡所得の特別控除(譲渡所得の計算上3,000万円を控除できる特例)

(3)特定居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(居住用財産を買換えた場合に譲渡所得の課税のうち一定額を繰り延べる特例)

(4)特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(居住用財産を交換した場合に譲渡所得の課税のうち一定額を繰り延べる特例)

  本件については、買換えや交換をして居住用家屋等を取得しているわけではありませんので、(3)及び(4)は対象外となります。そのため、(1)と(2)の特例の適用が受けられるかが問題となります。

3、居住用財産の意義
  2(1)及び(2)の対象となる家屋等は、いずれも自己の居住の用に供している家屋等又は居住の用に供していた家屋等で居住の用に供されなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日迄に譲渡した場合に対象となりますが、居住用家屋の範囲について検討する必要があります。

(1)原則的取扱い

  居住の用に供している家屋とは、その者が生活の拠点として利用している家屋(一時的な利用を目的とする家屋を除く。)をいい、これに該当するかどうかは、その者及び配偶者等(社会通念に照らしその者と同居することが通常であると認められる配偶者その他の者をいう。)の日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して判定することとされています(措通35-5、措通31の3-2)。

  また、転勤、転地療養等の事情のため、配偶者等と離れ単身で他に起居している場合であっても、当該事情が解消したときは当該配偶者等と起居を共にすることとなると認められるときは、当該配偶者等が居住の用に供している家屋は、その者にとっても、その居住の用に供している家屋に該当することとされています(措通31の3-2)。

(2)例外的な取扱い

  その有する家屋が(1)に記載したような居住の用に供している家屋に該当しない場合であっても以下の全ての要件を満たしているときは、その家屋はその所有者にとって「その居住の用に供している家屋」に該当するものとして取り扱うことができるとされています(措通31の3-6)。

@当該家屋は、当該所有者が従来その所有者としてその居住の用に供していた家屋であること

A当該家屋は、当該所有者が当該家屋をその居住の用に供さなくなった日以後引き続きその生計を一にする親族の居住の用に供している家屋であること

B当該所有者は、当該家屋をその居住の用に供さなくなった日以後において、既に2(1)〜(4)、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除又は特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の規定の適用を受けていないこと

C当該所有者のその居住の用に供している家屋は、当該所有者の所有する家屋でないこと

4、まとめ
  本件においては、転勤に伴い同居されていた家族全てが中国に転勤されております。そのため、家財道具をそのままとし、いつでも戻れるような状況になっていたとしても、実際の生活の本拠が中国になっているため、居住用家屋には該当しないものと考えます。
  なお、居住の用に供さなくなった場合であっても、居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日(本件では、平成21年12月31日)までに譲渡した場合には、当該特例の対象にすることが可能です。その場合には、他の要件を満たしていることが前提となりますが、2(1)と(2)の特例の適用を受けることができます。

(2013.07.23)

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