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個人事業者の有利な取扱いについて

  個人事業者の確定申告において適用することができる、有利な取扱いについてまとめています。
【1】概要
  事業を始めるにあたっては、まず個人事業からスタートされる方も多いかと思いますが、今回は、個人事業者の確定申告をする際に有利な規定や取扱いについてまとめてみたいと思います。
【2】青色申告制度
  個人事業の開業時に必ず必要となるのが「個人事業の開廃業等届出書」となりますが、これについては、事業所の所在地、事業の内容等を記載して、その納税地の所轄税務署へ開業後1ヶ月以内に提出することになっています。
  さらに、青色申告をしようとする場合には、原則として、開業後2ヶ月以内に「所得税の青色申告承認申請書」についても提出する必要があります。
  青色申告者は、青色申告特別控除、純損失の繰越控除等、様々な特典を受けられます。
【3】青色申告特別控除
(1)内容

  青色申告者については、所得金額から、65万円又は10万円の青色申告特別控除を受けることが認められています。なお、もともと所得金額が65万円に満たない場合には、その金額が控除の限度額となります。

(2)65万円の特別控除の要件

@事業所得又は不動産所得があること

A一定の帳簿の備え付け、及び複式簿記(正規の簿記の原則)により、すべての取引を記録していること(貸借対照表等の作成が必要となります。)

BAの記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書を確定申告書に添付して、この特別控除を受ける金額を記載し、申告期限内に提出すること。

(3)10万円の特別控除の要件

  65万円の特別控除の要件を満たしていない場合には、10万円の特別控除を受けることができます。
  記帳に関しては、複式簿記ではなく、簡易の簿記や現金主義(おこづかい帳のような形)でも構いません。ただし、一定の帳簿の備え付けは必要となります。

【4】青色事業専従者給与及び専従者控除
(1)内容

@青色申告者である場合(青色事業専従者給与)
  事業を営んでいる者が青色申告者であり、その者と生計を一にする配偶者その他の親族(15歳以上の者に限ります。)が、その事業に専従しており、給与が支払われる場合、その金額が適正である場合には全額必要経費に算入されます。
  なお、金額が不当に高額である場合については、適正額を超える部分の金額は必要経費不算入となります。

A白色申告者である場合(事業専従者控除)
  事業を営んでいる者が白色申告者であり、その者と生計を一にする配偶者その他の親族(15歳以上の者に限ります。)が、その事業に専従しており、給与が支払われる場合には、専従者1人につき50万円(配偶者である場合には86万円)又は一定の方法により計算した金額のいずれか低い金額が必要経費に算入されます。
  なお、6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専従しており、また、確定申告書に、この控除を受ける旨、金額など必要事項を記載することが必要となります。

(2)青色事業専従者給与の適用要件

  次の要件をすべて満たした場合に、(1)@の適用を受けることができます。

@次の要件を満たす青色事業専従者に支払われた給与であること
(イ)青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
(ロ)その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
(ハ)その年を通じて、原則として6月以上の期間、その青色申告者の事業に専従していること

A一定の事項を記載した「青色事業専従者給与に関する届出書」を、適用を受けようとする年の3月15日(その年の1月16日以降に新たに事業を開始した場合等には、その開始した日等から2月以内)に、納税地の所轄税務署長へ提出していること

B届出書に記載された方法により支払われ、また、記載された金額の範囲内で支払われていること

C労務の対価として相当と認められる金額であること

(3)注意点

  (1)@、Aの適用を受ける場合には、配偶者控除又は扶養控除の対象とはなりませんので、注意が必要です。

【5】損益通算及び純損失の繰越控除
(1)内容

  事業所得、不動産所得などが赤字となってしまった時は損益通算により、他の所得と通算することができます。
  損益通算については、事業所得、不動産所得、総合課税の譲渡所得、及び山林所得に限定されています。
  なお、損益通算をしてもまだ計算結果がマイナス(赤字)となっている場合、翌年以降3年間繰り越して各年の所得から控除することができます。

(2)繰越控除の要件

@損失が生じた年に確定申告書をその提出期限までに提出していること

Aその後の年についても、連続して確定申告書を提出していること

(3)注意点

  青色申告者については、純損失の金額をすべて翌年以降3年間繰り越しすることができますが、白色申告者については被災事業用資産の損失及び変動所得の計算上生じた損失に限定されています。
【6】純損失の繰戻し還付
(1)内容

  青色申告者については、純損失の繰越控除のほか、前年に所得がある場合、一定の要件を満たす場合には、その純損失を控除して税額計算をし直して、前年に納付した所得税の還付を受けることができます。

(2)要件

@その年分の青色申告書である確定申告書をその提出期限内に提出し、同時に「還付請求書」を提出すること

A前年分についても青色申告書を提出していること

(3)還付金額

  前年分の所得税額−(前年分の所得金額−純損失の金額(※))×前年分の税率
  (なお、還付される金額は、前年分の所得税額が限度となります。)

(※)純損失の金額のうち、繰り戻さなかった金額がある場合には、その純損失の金額は、翌年以降繰り越すことができます。

(4)還付加算金

  還付金に対し、現状、年4.3%の割合で、原則として法定納期限の翌日から起算して、還付金の支払決定日までの期間の還付加算金がつきます。

【7】振替納税
(1)内容

  その年の所得税の確定申告書については、申告期限が翌年の3月15日となっており、納税についても申告期限と同日が納期限となっています。
  なお、この納税について振替納税の手続きをした場合には、3月15日ではなく4月の半ばごろ(年によって変わります。)が納期限となります。
  振替納税は、個人事業者の消費税(通常は翌年3月末が納期限)についても適用があり、これについても、4月半ばごろが納期限となります。

(2)手続き

  その年の確定申告書とともに、「振替納税の新規申込み」をその確定申告書の提出期限までに提出することが必要です。
  なお、その提出した確定申告書にかかる税金から、振替納税となります。

【8】延納
(1)内容

  資金繰り等で納期限までに納税することが難しい場合、所得税については延納の制度を利用することができます。
  なお、これについては、納期限までに納付すべき税額の2分の1以上を納付していることが条件となります。
  残額の納付については、5月末が納期限となっています。

(2)手続き

  確定申告書の第一表の右下に、「延納の届出」欄がありますので、「申告期限までに納付する金額」及び「延納届出額」を記載して、申告期限までにその確定申告書を提出する必要があります。

(3)利子税

  延納する税額に対して、現状、年4.3%の割合で利子税がかかることになります。ただし、この利子税の金額については、事業から生ずる所得に対応する部分の金額は、所得の計算上、必要経費に算入することができます。


(2013.05.15)

⇒「白色申告」についてはこちら

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