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相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例
相続した財産の大部分が土地で、相続税を納める資金が不足しているような場合、やむを得ず相続した土地の一部を売却して納税資金に充てる方法がとられることがあります。この場合、その資産の譲渡についても所得税が課されてしまっては、相続税を払えなくなってしまう可能性も出てきます。 このような事態に配慮し、相続又は遺贈により取得した土地、建物、株式などを、一定期間内に譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるという制度が設けられています。 制度創設当初は、譲渡した財産に対応する相続税額分のみ、取得費に加算することができましたが、平成5年の改正で、相続土地等に係る特例が設けられ、相続財産である土地等の一部を譲渡した場合、譲渡した土地等を含む相続した全ての土地等に対応する相続税額を取得費に加算することができることとなったため、相続により土地を取得した人にとって、非常に重要な制度になりました。 会計検査院は、検査の結果、現行制度では、譲渡していない土地等に対応する相続税相当額の加算割合が著しく高い者が過半数以上で、このうち5人に1人が譲渡所得が生じていないとのことで、土地等を多く相続してその一部を譲渡した者は取得費の加算上著しく有利な状況となっていることを問題視しています。 財務省は、会計検査院からの指摘を踏まえ、特例が有効かつ公平に機能しているかの検証を行い、制度本来の趣旨に沿ったものとなっているか検討する方向とのことです。 会計検査院の指摘後、数年以内に改正された制度は数多くありますので、今後の動きについて注目しておく必要があります。 以下、制度の内容を簡単にまとめています。 (1)特例の概要(措法39)
相続により取得した土地、建物、株式などを、一定期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるというものです。この特例は、譲渡所得のみに適用がある特例で、事業所得や雑所得に係る譲渡については適用されません。
(2)特例の適用要件
以下の@からBの全てに該当することが要件になります。
@相続や遺贈により財産を取得した個人であること。 Aその財産を取得した者に相続税が課税されていること。 Bその財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。 (3)手続要件
この特例の適用を受けるためには、以下@からBの書類の添付をして確定申告する必要があります。
@相続税の申告書の写し(第1表、第11表、第11表の2、第14表、第15表) A相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書 B譲渡所得の内訳書(土地、建物用)又は株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書等 (4)取得費に加算する相続税の額(措令25-16)
取得費に加算する相続税の額は、次の@及びAで計算した金額の合計額又はBの金額のいずれか低い金額となります。
@土地等(土地や借地権)を売却した場合 A土地等以外の財産(建物や株式など)を売却した場合 Bこの特例を適用しないで計算した譲渡所得の金額
≪例1≫
(前提条件)
相続財産:A土地1億円、B土地6,000万円、C土地4,000万円の合計2億円とする。 相続税額:5,000万円とする。 納税資金を工面するために、C土地を5,000万円で売却する。 取得価額は不明のため、売却価額の5%とする。 手数料等は発生しないものとする。 C土地の保有期間は10年超とする。 復興特別所得税は考慮しないものとする。 取得費に加算する相続税の額は、次の@又はAのいずれか少ない金額になります。 Aこの特例を適用しないで計算した譲渡所得の金額 よって、譲渡所得金額は 5,000万円−(5,000万円×5%+4,750万円)=0円 となります。 (5)土地等の特例がなくなった場合の影響額
上記(4)≪例1≫と同様の条件で、今後税制改正により土地等の特例がなくなった場合の、譲渡所得の金額を計算してみます。
≪例2≫
取得費に加算する相続税の額は、次の@又はAのいずれか少ない金額になります。
Aこの特例を適用しないで計算した譲渡所得の金額 よって、譲渡所得金額は 5,000万円−(5,000万円×5%+1,000万円)=3,750万円、譲渡所得税額は3,750万円×20%(長期譲渡所得に係る税率)=750万円になります。 (2013.09.09) |
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